サプライチェーンに明かりをともすJDA、AIとIoTで管理の自律化を推進:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
製造業はサプライチェーンの効率化と強じん化に力を注いでいる現在、SCMシステムとIoT、AIの組み合わせに期待が集まっている。SCM大手のJDAソフトウェアでAPAC社長を務めるAmit Bagga氏に、製造業のサプライチェーンにおける現在地と次世代SCMがもたらす効果を聞いた。
欠品リスクと在庫リスクを同時に減らすJDAの次世代SCM
MONOist サプライチェーンの理想像に向け、JDAではどのような取り組みを進めていますか。
Bagga氏 われわれは今後3年間で5億米ドルの投資を行う予定で、SCMのマーケットを引き続きリードする方針を立てている。2018年7月にはサプライチェーン向けにAIソリューションを提供するBlue Yonderの買収を発表した※)。Blue Yonderの技術は、既にわれわれのクラウドSCMプラットフォーム「Luminate」に統合され、SaaSソリューション「Luminate Demand Edge(以下、Demand Edge)」で提供している。
※)関連記事:サプライチェーン向けAIベンダーを買収、顧客企業のデジタル変革を支援
Demand Edgeはサプライチェーンに関わるインサイトを収集し、需要計画の策定に有用な情報を提供する。需要予測を行うには、消費者の複雑な購買に関する意思決定プロセスを理解する必要があるが、Demand EdgeではBlue YonderのAIによって人の意思決定に関わるバイアスも考慮できる。
これにより、需要予測は購買の意思決定バイアスに関わる気候や曜日といった200以上の変数から算出され、平均値でなく確率密度関数の形で提供されることが特徴だ。確率密度関数の形で需要予測を行うことにより、顧客の戦略とサプライチェーンの制約に応じて全ての販売シナリオの中から最適な発注量を自動で求める。
スーパーマーケット運営を行うある小売業では、店舗における欠品や生鮮食品の過剰在庫などのリスクを抱えており、需要予測の策定に多くの人出を要していた。そこで、同社はDemand Edgeを導入して需要予測と発注業務の99%を自動化し、欠品率と在庫日数も同時に低減している。
また、Luminateの中核となるソリューション「Luminate Control Tower(以下、Control Tower)」も2018年12月から正式リリースしている。Control TowerはDemand Edgeなどで得られたサプライチェーンのインサイトを可視化し、社内外に広がるサプライチェーンを管理する“管制塔”の役目を担う。
Control Towerでは、工場の稼働状況や船便の運行状況といったSCMに必須なデータから、天候やニュース、SNSの書き込みといったマイクロレベルデータまでリアルタイムに収集し、デジタルダッシュボードでリアルタイムに可視化を行う。これらのインサイトから、サプライチェーンの柔軟な計画と実行を支援する。
このように、「illuminate(灯火をともす)」を基にしたLuminateというネーミングには、サプライチェーンに自律の火をともし、ビジネスのリアルタイム意思決定を助けるという意志を込めている。クラウドソリューションであるので導入も短期間ででき、PoC(概念実証)も早期に行えることがメリットだ。
MONOist 2018年の日本では大規模な自然災害が相次ぎ、製造業のサプライチェーンにも大きな影響を与えました。Luminateを導入していた場合、どのような効果が期待できていたでしょうか?
Bagga氏 難しい質問だが、災害の発生状況からみたサプライチェーン状況の予測ができただろうと考える。Luminateでは災害が発生した場合にサプライチェーンの可視化がエンドツーエンドにわたって可能だ。これにより、在庫をどのように補充していけば良いかという判断もできたのではないか。
MONOist 日本市場における事業展開や販売目標を教えてください。
Bagga氏 日本市場の顧客は技術に対して投資をしている。よって、出来合いのシステムをそのまま提供しても顧客の要求を完全に満たすことが難しい。日本の顧客とは新たなユースケースに向かって一緒に協業する形を採っている※)。
※)関連記事:工場、倉庫、流通向けソリューションの共同開発に関する覚書を締結
販売目標については、Luminateが日本の顧客から非常に好印象を持たれており、引き合いも多数ある状況だ。2019年度に10ライセンスの販売を目指す。
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