2030年は自動車市場の半分が商用車に「CASEでもコネクテッドは乗用車に先行」:モビリティサービス
PwCコンサルティングが、商用車と自動車業界に大きな影響を与えている「CASE」の関係性について説明。「乗用車で注目を集めるCASEが商用車業界にも流れ込んでいるという話を聞くことあるが、実際にはそうではない。一部では乗用車以上に早く現実化、事業化している分野もある」(同社)という。
PwCコンサルティングは2019年2月22日、東京都内でメディア向けセミナーを開き、商用車と自動車業界に大きな影響を与えている「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)」の関係性について説明した。セミナーに登壇した同社 パートナー 自動車・商用車サービスリーダーの早瀬慶氏は「乗用車で注目を集めるCASEが商用車業界にも流れ込んでいるという話を聞くことあるが、実際にはそうではない。一部では乗用車以上に早く現実化、事業化している分野もある」と述べ、商用車がCASEとの関わりを深めてきたことを強調した。
早瀬氏は、CASEのうちコネクテッドについては、車両の稼働管理、ドライバーの運転管理に加え、運行管理≒ユーザー事業の支援という観点から「商用車メーカーが最も開発に注力している」(同氏)として、乗用車よりも取り組みが進んでいる分野とする。一方、自動運転については、商用車も乗用車も実証実験から実用段階に移行する段階にあり、ほぼ同じレベルで進展しているという。
CASEのうち商用車が乗用車と比べて進んでいないのは、シェアリング&サービスと電動化だ。シェアリングエコノミーの代表例にもなっている乗用車に対して、商用車はその商習慣などからシェアリングはなじまないのが現状だ。「それよりもまずは荷主と荷物をつなぐようなマッチングから取り組みが始まっている」(早瀬氏)。電動化については、法規制により中国や欧州をはじめ乗用車で進みつつある。一方、商用車の場合、「いかに安く運べるかという経済的合理性が重視される」(同氏)こともあり、実用化はゆっくり進む状況にある。長島氏は「CSR(企業の社会的責任)的な観点から小型商用車などで電気自動車が一部導入されているが、鍵になるのは大型車や特装車への適用だろう」と説明する。
ラストワン“インチ”の次世代モビリティが登場
早瀬氏は、2030年の世界の移動需要が、物流量で2018年の2倍、人の流量で1.6倍に増えるとした上で「今後は自動車市場の半分が“商用車”になる」と強調した。2017年時点で世界の自動車市場のうち乗用車が73%、商用車が27%にすぎないにもかかわらず、なぜそのような予測になるのか。
理由は2つある。1つは、物流プロセスにおける個人に荷物を渡すラストワン“インチ”の次世代モビリティの登場だ。「2018年9月に開催された世界最大の商用車ショーである『IAA』では、架装メーカーや自動車部品メーカーが、電動自転車などを活用したこれらのモビリティを展示していた。今後市場として成長していく可能性がある」(早瀬氏)という。そしてもう1つの理由は、モビリティサービスの普及によって、個人所有の乗用車市場が社会インフラとしての商用車に移行するからだ。これらの結果として2030年には、広義の商用車市場が全体の52%、乗用車が48%になるというわけだ。
このように商用車業界は大きな変革の波にさらされており、CASEの浸透に合わせて新たな市場参入を目指す企業も増えている。早瀬氏は「そういった“新しい主役”たちが描く世界観は非常にユニークだが、実用的観点、つまりトラックの使われ方、バスの乗られ方などの把握や理解がまだ甘い。実用に耐えないといっていいだろう。とはいえ、現時点で商用車メーカーに分があるものの、“新しい主役”たちも追い付いてくる」と述べる。
また、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)に代表されるITジャイアントが、商用車との関わりが深い物流に取り組む可能性も高い。「商用車メーカーはGAFAがライバルになるとは考えていないが、オープンイノベーションは必要だとも思っている。表に出ている以上に、さまざまな企業が関わってCASE関連の開発が進んでおり、もはや1人で戦う時代でないことだけは確かだ」(早瀬氏)としている。
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