IoT時代は「自分は○○のエンジニア」と言わなくなるか:DMM.makeの中の人に聞く「IoTとスキル」(8)
IoTを業務に活用したい人たちをサポートしている、DMM.MAKE AKIBA のスタッフへのインタビュー。今回は、DMM.make AKIBAのテックスタッフ、椎谷達大氏の後編をお届けする。
IoTを業務に活用したい人たちをサポートしている、DMM.make AKIBA のスタッフのインタビュー。4人目に登場いただくのは、テックスタッフとして活躍している椎谷達大氏(>>前編)。
それって、スマホでできるんじゃない?
―― IoTに関して、課題と感じていることはありますか。
椎谷 IoTは、ただの「ワード」だと思うので、言葉に踊らされて本質を見失ってはいけないですし、IoTありきで物事を考えるのは、あまりいいアプローチではないと思います。何か課題があったり、成し遂げたいことがあって、それが結果的にIoTだった……というくらいのワードです。特にハードを開発しようというときに、最初にIoTが来るのは危険ですね。ハードを開発するということは、解決したい課題があるはずで、それが必ずしもIoTで解決できるとは限りません。
―― こちらに相談に来られる方は、ハードを含めて作りたい方が中心だと思いますが、ハードの開発を考えるうえで気をつけた方がいいことはありますか。
椎谷 Wi-FiやBluetoothなどの通信手段を使い、ソフト的な処理もするようなことならば、今はスマートフォンでいろいろなことができます。わざわざお金をかけてハードを開発しても、同じことがスマートフォンでできるという話にもなりかねません。
こういう話はお客さまにもよくするのですが、何か作りたいというアイデアがあるなら、まずそれがスマートフォンで実現できるかどうかを考えたほうがいいと思います。専用のハードを作るならスマートフォンではできないことをする。そうでないと意味がありません。
スマートフォンが普及したことで、使いこなしている人と、そうでない人の間に新しい格差も生まれています。意味のあるハード開発をするならば、スマートフォンではできないこと、あるいはスマートフォンを絶対に持たない人をターゲットにするといいと思います。
世の中を良くするIoTは?
―― IoTはどういう分野で活用されていくと思いますか。
椎谷 「より便利になる」とか「もっと楽しくなる」といったIoT機器は、あまり普及しないと思います。例えばレシピを提案してくれる冷蔵庫があったら、便利かもしれない。でもその付加価値を喜んで買ってくれる人は、それほど多くないと思うのです。
IoTで世の中を良くしていくのは、本当に差し迫った課題のところでしょう。すでに多くの方が取り組んでいますが、高齢者の方に関わる介護や見守り等は、現実的に世の中を良くするために、IoTというキーワードが一番ささる分野の1つだと思います。例えば、ベッドに敷いて寝返りなどを感知するセンサーは、専用のハードが必要な一例です。
―― では、IoTを業務に活用できる人になるために、1つだけアドバイスするとしたら。
椎谷 IoTが最終的につながる先はネットワークですが、ネットワークだけでなく、電気、機械、ソフトと幅広い知識が必要です。どれか1つだけ知っていればいいという時代ではなくなっています。全ての分野を極めるのは難しいですが、自分の専門にとらわれず、アンテナを高くして、幅広く興味を持って、引き出しの数を増やす。詳細は分からなくても、キーワードぐらいは知っていた方がいい。「自分は○○のエンジニア」という考え方は捨て去った方がいいのかもしれません。(終わり)
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