「3D CADとIoT」がイマイチ理解できないので、ダッソーに聞いてみた:3D設計推進者の眼(17)(1/2 ページ)
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は「3D CADとIoT」について、ダッソーを訪問して疑問をぶつけてみた。
「3D CADとIoT」がイマイチ理解できないので、ダッソーに聞いてみた
前回、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」や「ビッグデータ」、「インダストリー4.0」といった技術トレンドを示す語句について話題にしました。
ビッグデータの起源は、諸説あるものの2010年がその始まりのようです(関連リンク:そもそも、ビッグデータって何なの?:ITmedia ビジネスオンライン)。
またインダストリー4.0(Industrie 4.0)は、大まかなコンセプトが、2011年にドイツで開催された産業機器の展示会「ハノーバーメッセ 2011」で明らかにされています。「第4次産業革命」ともいわれています。産業革命の第1次が「水力や蒸気機関による工場の機械化」、第2次が「電力の活用」、第3次が「生産工程の自動化」、そして第4次が、「IT(Information Technology:情報技術)と、IoT」となっています(関連記事:インダストリー4.0って何でこんなに注目されているの?)。
さらに、ネットワーク上の機器の情報のやりとりや協調(M2M:Machine to Machine)、ネットワークから得られるビッグデータの収集と活用、業務システム連携(ERP:Enterprise Resource Management)とPLM(Product Lifecycle Management)/SCM(Supply Chain Management))が、この第4次産業革命を代表する要素だと私は考えています。
これらの言葉が登場してから時間がしばらくたち、最近では珍しい言葉でもなくなっていると思える一方、その具体的なものが何なのか、正直、よく分かりません。特に私自身が関わる装置産業と結び付けて考えようとすると、それで「何があるのか」「何が起こるのか」といったことが、どうも「モヤッ」としているのです。
そんな中、特に聞こえてくることが多くなってきた言葉がIoTでした。前回も触れましたが、ソリッドワークス・ジャパンのイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016」でも、「3D CAD(SOLIDWORKS)とIoT」として、ダッソー・システムズ ソリッドワークスのキショア・ボヤラクントラ(Kishore Boyalakuntla)氏より話がありました。
その話を聞き、私のモヤモヤがさらに深まってしまったので、直接、ダッソーにお話を聞きにいきました。同社から、PR&Communications Senior Manager 広報担当の佐藤有喜子氏をはじめ、3人の方々が対応してくださいました。
前回も書いた、「『3D CADとIoT』となると、インターネットを利用したデータ共有をすることとは意味が異なりますよね? あのカンファレンスでお話を聞いても、3D CADのSOLIDWORKSと、Xively(ザイブリー)とNETVIBES(ネットバイブス)といったIoT関連の新製品、IoTのサービスとの関係がイマイチ理解できなかったんです。『3D CADとIoT』で、具体的には何が出来るようになるのですか?」というモヤモヤをぶつけさせていただきました。
以下、皆さんにお話しさせていただく内容は、同社回答を受けた、私自身の解釈になります。どうかご了承ください。
そもそも、IoTって何?
まずは、「IoTって何」ということを、具体的な製品事例から理解してみましょうということで話は始まりました。IoTといっても、その形はさまざまです。それは「IoTの活用例はたくさんある」とも言えます。
その例としては、以下が挙げられます。
- 自動運転自動車:今や旬な話です。画像認識技術の進化によって、その自動運転技術は飛躍的に向上しています。テスラモーターズ(Tesla Motors)では既に完全自動運転対応のハードウェアが搭載されています。
- スマートゴミ箱:ゴミ箱(廃棄物容器)内に無線センサーを取り付けたゴミ箱「Enevo」という製品システムがあります。このセンサーによってゴミの堆積率を計測して、ゴミ収集車にとって最も効率的な収集プランとルートを算出します。これによって廃棄物回収コスト、CO2排出、車両摩耗、車両燃料費、騒音公害といった問題を解消し、そのための人件費も削減され、ゴミがあふれるようなこともなくなります。
- サーモスタット(温度調節器):「Nest」というサーモスタットは、ネットにつながるサーモスタットです。学習機能による自動温度調節が可能です。過去のSOLIDWORKS WORLDのキーノートセッションでも紹介されました。
- 航空機エンジン:GE(ゼネラル・エレクトリック)では、航空機エンジンの遠隔監視による保守サービスを行います。センサーを使った航空機全体の予防保全や、さらに運行計画の最適化までをビジネスとします。
- タイヤ:ミシュラン(Michelin)では、走行距離に応じてタイヤ使用料を支払う「Tire as a Service」という新サービスを展開します。
- コピー機:これは皆さんにもなじみは深いでしょう。ネットにつながっているコピー機(複合機)の故障を遠隔監視します。また消耗品の残量確認や自動発注も可能になります。これによりサービス要員の負担は低減され、サービスは向上します。
身近なものからハイテクに至るまで、IoTは既に生活に浸透してきているといえるでしょう。
これらの例から見て分かることがあります。「IoT」とは「モノのインターネット」ですから、インターネットはこれら1〜6のモノ(設備)と人をつなぐものだということになります。すなわち、これらが目指しているのは、「モノのサービス化」だといえます。IoTを利用することで、これまで製造されていたものが「サービス」という新たな価値観を産み出すものに変わります。
新たに創出されるサービスによって、その製品を作る企業の競争力が強化されることになるわけです。ここで、SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016で語られていた「イノベーション」というテーマとつながりました。テクノロジーの組み合わせによる製品開発というわけですね。
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