エッジ戦略を強化するHPE、エンタープライズITとOTの融合で何が起こるのか:製造業IoT(2/2 ページ)
日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)がエッジコンピューティング戦略について説明。日本HPEが得意とするエンタープライズITと、工場やプラントなどで用いられているOT(制御技術)を物理的に融合した「業界初」のシステムとなる「HPE Edgelineソリューション」の国内展開を始めるという。
キヤノンも期待する「HPE Edgelineソリューション」
ブラディシッヒ氏に続いて、会見に登壇したのがキヤノン イメージソリューション事業本部 FA事業推進部 ICB本部長室 事業アライアンス推進/IT戦略企画担当主席の荒井毅一氏だ。キヤノンと日本システムウエア、日本HPEは2019年1月、スマート工場分野での協業を開始することを発表している※)。
※)関連記事:スマート工場分野でキヤノンとNSW、日本ヒューレット・パッカードが協業
荒井氏は「これまでコンシューマー向けに展開してきたカメラ技術を、B2BやOT向けに展開すべく『CANON INDUSTRIAL IMAGING PLATFORM』を展開している。例えば、工場内に多数あるアナログメーターを当社のカメラで画像認識し、HPE Edgelineソリューションと連携させていく。PLCの信号と同期してカメラの画像を集約する。これらのソリューションの協業だけでなく、当社の生産現場でもHPE Edgelineソリューションを活用していきたいと考えている」と述べている。
ITだけでなくOTのベンダーもパートナーに
なお、今回発表したHPE Edgelineソリューションは、HPE Edgeline Converged IoT Systems、HPE Edgelineソリューションのシステム管理を行う「HPE Edgeline Integrated System Manager(iSM)」と「HPE Edgeline Infrastructure Manager(EIM)」、OTデバイスやプロトコルとの接続・制御を可能にする「HPE Edgeline OT Link」の認定モジュールとソフトウェアプラットフォーム、エンタープライズITのアプリケーションをエッジに展開するための「HPE Edgeline Workload Orchestrator」から成る。
HPE Edgeline Converged IoT Systemsについては、従来モデルの「EL1000」「EL4000」の他、新ラインアップとなる「EL300」が加わった。EL300は、動作温度範囲が−30〜70℃、IP50の防じん、ファンレス、耐衝撃と耐振動の性能を備えるとともに、小型サイズと30Wという低消費電力が特徴。工場内などより現場サイドでの利用に適した仕様となっている。価格(税別)は47万7000円からで、2019年2月8日に発売する。
HPEのOT市場への参入となるHPE Edgeline OT Linkの発売は2019年5月の予定。1GbE TSN、CAN Bus A/B/FD、RS232/422/485、1×8GPIOなど、OTとのつなぎ込みに必要なOT Linkモジュールを用意しており、OT Linkソフトウェアプラットフォームによって約200もの産業用プロトコルに対応するとしている。オープンAPIを採用しており、さまざまなエンタープライズITやIoTプラットフォームとの連携が可能で、パブリッククラウドとの接続も容易とする。
また、HPE Edgelineソリューションのパートナーとして、HPEとの付き合いが長い大手ITベンダーだけでなく、ABBやイートン、シュナイダーエレクトリック、キーサイト・テクノロジー、ナショナルインスツルメンツ、GEデジタル、OSIソフト、シーメンスなど多数のOTのベンダーもパートナーになっている。グローバルに加えて、国内でも先述のキヤノンの他、三菱電機、Edgecrossコンソーシアムなどがパートナーに加わっている。
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