エッジ戦略を強化するHPE、エンタープライズITとOTの融合で何が起こるのか:製造業IoT(1/2 ページ)
日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)がエッジコンピューティング戦略について説明。日本HPEが得意とするエンタープライズITと、工場やプラントなどで用いられているOT(制御技術)を物理的に融合した「業界初」のシステムとなる「HPE Edgelineソリューション」の国内展開を始めるという。
日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)は2019年2月8日、東京都内で会見を開き、HPE(Hewlett Packard Enterprise)のエッジコンピューティング戦略について説明した。日本HPEが得意とするエンタープライズITと、工場やプラントなどで用いられているOT(制御技術)を物理的に融合した「業界初」(同社)のシステムとなる「HPE Edgelineソリューション」の国内展開を始める。2016年10月に発表した「HPE Edgeline Converged IoT Systems」のラインアップ※)を拡充するとともに、PLCなどのOTに用いられる約200の産業用通信プロトコルに対応可能なモジュールとソフトウェアプラットフォームから成る「HPE Edgeline OT Link」を投入。「これにより、HPEはOT市場に参入することになる」(HPE バイスプレジデント&ゼネラルマネジャー コンバージドサーバ、エッジ&IoTシステムのトム・ブラディシッヒ(Tom Bradicich)氏)という。
※)関連記事:HPEのIoT戦略は「シフトレフト」、エッジにサーバ「Moonshot」の処理能力を導入
HPEは2016年6月開催の自社イベント「Discover 2016」で、HPE Edgeline Converged IoT Systemsを発表。データを得る末端のIoT(モノのインターネット)デバイスを左側、従来分析を行ってきたサーバを右側に置いた場合に、サーバで行っていた処理をエッジで実行できるようにする「シフトレフト」というコンセプトを打ち出し、エッジを重視する取り組みを進めてきた。さらに、2016年8月の「Discover 2018」では、エッジ領域に4年間で40億米ドルを投資する方針を表明している。
日本HPE 執行役員 ハイブリッドIT事業統括の五十嵐毅氏は「現在、クラウドの有効活用が求められる中で、データの8割がオンプレミスのデータセンターにあるといわれている。当社はよりクラウドの活用が可能になるクラウドイネーブルなソリューションを展開することで、この需要に応えてきた。一方で、今後データの7割はエッジで生成されるとも言われている。データセンターとクラウド、エッジ、これらにあるデータをどう扱っていくかが重要であり、HPEはインフラから支えていく」と語る。
エッジがエンタープライズITの機能を備えたら何ができるのか
会見には、HPEのエッジコンピューティング戦略をけん引するブラディシッヒ氏が登壇し、今回発表したHPE Edgelineソリューションの重要性を訴えた。同氏はまず、今回の発表におけるキーワードとなるOTの定義について説明。「OTとは何か。それはITではないものだ。OTには制御システム、データ収集システム、産業用ネットワークという3つの要素が含まれており、エッジに存在している。ITとは異なるOTの市場規模は1000億米ドルに達する」(同氏)という。
そして新たなHPE Edgelineソリューションは、HPEが得意とするデータセンターやクラウド向けのエンタープライズITシステムにOTを組み合わせて、1つの筐体に収めた「新たなカテゴリーの製品」(ブラディシッヒ氏)になる。同氏は「IoTの枠組みでは、エッジでデータを処理してデータセンターやクラウドに送るのが一般的だ。しかし、エッジがデータセンターやクラウドと同じエンタープライズITの機能を備えれば、データを送る必要はない。それによってさまざまなメリットが得られる」と主張する。例えば、応答時間の短縮、使用帯域幅の縮小、IT管理とソフトウェアのコスト削減、セキュリティと信頼性の向上、使用スペースの縮小、展開時間の短縮、ソリューションのパフォーマンス向上、エネルギー商品の削減などだ。
「HPE Edgelineソリューション」では、データセンタークラスのエンタープライズITをエッジに移動。OTと同一の筐体上に物理的に統合する。OTと同一の筐体上に物理的に統合する(クリックで拡大) 出典:日本HPE
ブラディシッヒ氏は「携帯電話機からスマートフォンへの進化と同じことが、ITとOTの融合によって起きる。このようなITとOTを融合した製品を展開できているのはHPEだけだが、将来的にはスマートフォンのように模倣されるだろう。それでも、最初に手掛けることで、その優位性を生かしていきたい」と強調する。
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