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レベル3の自動運転の普及は伸び悩む? 提案は無人運転シャトルや小口配送にMONOist 2019年展望(3/3 ページ)

「レベル3のシェアは2030年から横ばい」という市場予測を反映してか、2019年のCESでは無人運転車に関する展示が多くみられた。ドライバーが運転に復帰する必要のあるレベル3の自動運転と、システムが全ての動的運転タスクを担うレベル4〜5。それぞれについて、2019年は法的な議論や技術の熟成が一層進みそうだ。

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人だけでなく荷物も運ぶ

 無人運転車は物流でも重要な役割を果たす。シェフラーやパナソニックは、無人運転車のプラットフォームが人の輸送と物流のどちらにも使えるように、架装を載せ替える仕組みを提案した。パナソニックは電源電圧48Vのプラットフォームに冷蔵ショーケースを搭載した車両と、人を乗せる車両の2パターンを出展。また、パナソニックは冷蔵保存に対応した「スマートロッカー」も併せて展示し、都合の良い時に食品をピックアップすることで、食品流通のラストワンマイルを実現するソリューションとして紹介した。

パナソニックの無人運転車のコンセプトモデル。用途に合わせて架装を載せ替えることにより、人を乗せたり(左)、生鮮食品を輸送したりする(右)(クリックして拡大)

 フォード(Ford Motor)は、2021年にドライバーレスで運用を始める配送車両をブースに展示していた。現在はドライバーが乗車した状態で、ユーザーが車両から荷物を受け取るサービスの使われ方を検証している。車両側面のパネルで暗証番号を入力すると、該当するボックスが開いて荷物を取り出せる仕組みだ。2021年には米国内の複数の州でサービスを開始する。

フォードの無人配送車両。実証実験は人が乗車した状態で実施している(左)。暗証番号を入力して荷物を取り出す(右)(クリックして拡大)

 フォードの無人運転配送車両は既存の車両をベースに改造したものだが、無人配送に特化した専用の車両を出展する企業も見られた。CESに初出展した中国Eコマース大手のJD.comは、自律走行する配送ロボットを披露した。物流拠点で最大30個の小さな荷物を積載し、街を走るもので、既に一部地域で運用を始めている。ユーザーは顔認識技術で荷物を受け取ることが可能だという。中国のIT大手バイドゥ(Baidu)も、自動運転関連のさまざまな取り組みを紹介する中で、配送専用の自律走行ロボットを展示した。

JD.comの配送ロボット(左)。バイドゥも同様のコンセプトの配送車両を展示した(右)(クリックして拡大)

 サプライヤー大手のコンチネンタル(Continental)は、自動運転シャトルと配送ロボットを連携させた効率的な小口配送を提案した。人を乗せて移動する以外の時間も自動運転シャトルをフルに稼働するため、物流にも活用するというアイデアだ。自動運転シャトルに乗り込んだ複数の配送ロボットは、所定の場所で下車して配送先に向かう。「物流の自動化には信頼性が高く堅牢で低コストな技術が必要」(コンチネンタル)だとし、自動車で培った自動運転技術が応用できるとしている。

コンチネンタルの配送ロボット(左)。自動運転シャトルの車内に乗り込んでいる様子(右)(クリックして拡大)
コンチネンタルの小口配送ロボット(クリックで再生)

 CES 2019では、無人運転車や自律走行ロボットを使ったさまざまな提案が見られたが、実際に車両やロボットを自律走行で走らせるための法規制は完全には整っていない。しかし、ODD(Operational Design Domain:運行設計領域)の適切な設定や、限定された空間での実証実験などにより、無人運転車や自律走行技術の運用実績は着実に積み重ねられていくと考えられる。

 また、商用車メーカーの中には、稼働率の向上や、燃料費の削減、人手不足の解消といった費用対効果が明確なことから、乗用車よりも物流で自動運転が普及しやすいと見込む企業もある。港湾や工場の敷地、物流施設といった場所は一般の歩行者や車両が立ち入らないため、自動運転車を走行させるための限定領域を設定しやすいためだ。

 いつ来るか分からないシステムの要請に身構えながら運転席に座らなければならないレベル3の自動運転はどこまでニーズがあるのか。無人運転車やロボットは、安全性と効率化をどのように両立していくか。2019年は法的な議論や技術の熟成が一層進みそうだ。

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