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ソフト人材を求める製造業、競技プログラミングに熱視線組み込み開発ニュース(2/2 ページ)

ソフトウェア人材の獲得競争が激化している。特に新卒人材の獲得は企業の将来競争力に直結することもあり、各社は工夫をこらした取り組みを進める。その中でも、競技プログラミングに活路を見出す製造業企業が増えている。

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白熱する決勝戦、優勝者は……

 テスト動作で実機の様子を観察した参加者は、最後の20分間で自らのコードの修正作業を行った。また、ディスコは決勝に進出できなかった参加者に対して空き時間を利用して同社の製品や技術、福利厚生などをアピールする会社ツアーを企画していた。

左:コーディングに取り組む決勝参加者 右:会社ツアーでディスコ社員から説明を受ける参加者(クリックで拡大)

 迎えた決勝では多くの参加者がテスト動作から溶液生成量を増やし、白熱した戦いとなった。同コンテスト開催に協力するAtCoder社長の高橋直大氏による実況では、「優勝に求められるバルブ付きカップの周回数は4周」「溶液をこぼさないためにバルブAからBへ移動するときの加速度と、バルブBから溶液タンクまで移動するときの加速度、方向などについて注意深く検討する必要がある」などのコメントがあった。


決勝の様子。水をこぼしながら装置が動作している(クリックで拡大)
決勝で優勝者のプログラムによる装置動作の様子。水がほとんどこぼれていないことが分かる(クリックで動画再生)

 DDCC2019は開催以来初めてのコード部門、装置実装部門と2部門で争われた形となったが、本大会で早速2部門制覇した優勝者が登場した。その優勝者は東京大学大学院でコンピュータ科学を専攻するyosupo(AtCoderユーザー名)さん。同大会にC++で参戦したyosupoさんは、装置実装部門決勝戦で500.5mL(テスト時も436.5mLで首位)のスコアを獲得し、2位(470.0mL)以下に大差をつけた勝利となった。装置開発時、ディスコ社内チームの成績は約460mLだったという。

左:装置実装部門の最終結果 右:シリコンウェハの賞状を授与するディスコ社長の関家一馬氏(左)と表彰を受けるyosupoさん(右)(クリックで拡大)

 装置実装部門の取り組み方について、yosupoさんは「(バルブ付きカップを動かす平面の)X軸とY軸を別で考えると水がこぼれてしまう。また、制限時間とカップ速度の関係から、バルブ付きカップの周回数は3周、4周、5周と分けて検討することが大事。仮に4.5周など出来ていても4周と水の量は変わらないため、いかに水をこぼさず運搬するか気を配った」と語る。2部門制覇で受け取る賞金(現金70万円)と賞品(30万円までの好きなPC)の使い道については「いざ制覇すると迷ってしまう。(賞金で)旅行にでも行こうかな」と話した。

 現在修士1年生のyosupoさんは2020年4月に修了を迎える。修了後は「就職を考えている」(yosupoさん)とするが、yosupoさんを含めた各部門の上位成績者にはディスコの新卒採用応募時に面接パス券が授与された。

 ディスコ社長の関家一馬氏はソフトウェアエンジニア出身。関家氏は「会社に入って初めてモノを動かすソフトウェアを作ったが、この出会いには衝撃を受けた。参加者にモノを動かすソフトウェア開発を経験してもらいたいと思ったので装置実装部門を新設した」と語る。

 続けて関家氏は“社長のネタバレ”と題し、装置実装部門の攻略で考慮すべきポイントについて「X軸とY軸の合成速度、加速度の検討が重要だった。カップに入っている水の量で許容できる速度ベクトルの変化量も異なる」と指摘し、「奥深いテーマだった」と大会を振り返る。関家氏は「来年はもっと面白いテーマにする」と意気込みを見せた。

 同コンテストの運営協力を行ったAtCoderは、プログラミングコンテストの企画運営やソフトウェアエンジニアの採用支援を行う。AtCoderでは複数の製造業関連企業がプログラミングコンテストを開催しており、過去1年間に開催されたコンテストではディスコの他、キーエンスやアスプローバ、エイシング、MUJINなどの企業が名を連ねている。


装置実装部門の決勝に進んだ参加者が生成した溶液量(クリックで拡大)

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