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欧米に負けないオーストラリアのデジタルヘルス、NSW州にみるMedtechと地域創生海外医療技術トレンド(42)(3/3 ページ)

欧米にも負けないスピード感で地域単位のデジタルヘルスに取り組んでいるオーストラリア。同国で最大規模となるニューサウスウェールズ(NSW)州における、医療技術(MedTech)産業の振興と地域創生の取り組みを見てみよう。

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地域社会インフラとしてのMedTechとサイバーセキュリティに注目

 地域を起点とする新規技術イノベーション創生に向けた取り組みは、MedTechと密接に関係するサイバーセキュリティ領域でも進んでいる。表2は、2018年11月26日にNSW州政府が発表した「NSWサイバーセキュリティ産業開発戦略」の主要戦略テーマを示している(関連情報)。

表2
表2 ニューサウスウェールズ州政府のサイバーセキュリティ産業開発戦略の戦略的テーマ(2018年11月)(クリックで拡大) 出典:State of New South Wales「NSW cyber security industry development strategy」(2018年11月)を基にヘルスケアクラウド研究会作成

 同月30日には、NSW州政府が、オーストラリア・サイバーセキュリティ成長ネットワーク(AustCyber)を母体とする地域連携組織として、「NSWサイバーセキュリティ・イノベーション・ノード」を創設することを発表した(関連情報)。新たなノードの調整役を担う「NSWサイバーセキュリティ・ネットワーク(NSWCSN)」は、シドニー大学、シドニー工科大学、西シドニー大学、ニューサウスウェールズ大学、マッコーリー大学、ニューキャッスル大学、ウーロンゴン大学から構成されており、その重要機能には保健医療サイバーセキュリティも組み込まれている。

 本連載第41回で米国のサイバーセキュリティ行政改革を取り上げたが、オーストラリアでも、サイロ型縦割りの行政組織や業種/業界の枠を超えた新規イノベーション創出への取り組みが鮮明になっている点が注目される。MedTechもサイバーセキュリティも、まちづくりに欠かせない社会インフラの構成要素であり、複数領域を横串に刺す標準化/共通基盤化が持続可能性の成否の鍵を握る。そのためには、NSW州の事例が示すように、多様性とSTEMの素養を兼ね備えた高度人材を育成/供給できる体制の構築と継続的改善が欠かせない。

筆者プロフィール

笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)

宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。

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