リコーが高速かつ省電力のAI技術を開発、IoTデバイス上での学習も可能に:人工知能ニュース
リコーは、人工知能(AI)に用いられる機械学習の手法の1つであるGBDT(Gradient Boosting Decision Tree:勾配ブースティング決定木)モデルの学習を大幅に高速化、低消費電力化する回路アーキテクチャを開発したと発表した。
リコーは2018年12月26日、人工知能(AI)に用いられる機械学習の手法の1つであるGBDT(Gradient Boosting Decision Tree:勾配ブースティング決定木)モデルの学習を大幅に高速化、低消費電力化する回路アーキテクチャを開発したと発表した。
この回路アーキテクチャを実装したFPGAによるGBDTモデルの学習時間と、一般的なGBDTのソフトウェアライブラリ(XGBoost(extreme gradient boosting)、LightGBM、CatBoost)を用いたCPUやGPU上での学習時間を比べたところ、26〜259倍の学習の高速化を実現できたという。
開発した回路アーキテクチャを実装したFPGAによるGBDTモデルの学習時間と、CPUやGPU上で一般的なGBDTのソフトウェアライブラリを用いて行ったGBDTモデルの学習時間の比較(クリックで拡大) 出典:リコー
GBDTモデルの学習時間を短縮できるだけでなく、学習時の消費電力も小さい。モデル学習の電力効率は、CPUやGPUと比較して90〜1105倍に達する。この低消費電力性能により、電力供給にさまざまな制約があるエッジコンピューティングにも適用可能としている。なお、学習したモデルの予測精度についても、従来のソフトウェアライブラリで学習したモデルと同等であることを確認した。
なお、GBDTは、データベースなどで構造化された大量データの学習に高い性能を発揮するAI技術だ。例えば、オンライン広告のリアルタイムビディング(Real-Time Bidding)やEコマースのレコメンデーションなどのWeb分野、コンピュータによる株式の高頻度取引(High Frequency Trading)などの金融分野、サイバー攻撃の検出などのセキュリティ分野、ロボティクスなどが適している。リコーが開発した回路アーキテクチャによる高速学習は、これらの用途の他にも、その高い電力効率を生かして、IoT(モノのインターネット)デバイスをはじめとする各種エッジデバイス上での高度なモデルの学習を可能にする。
リコーは、AI開発に関する専任組織「AI応用研究センター」を2017年に設立し、AIの製品への搭載や、社内の業務改革への適用などに取り組んできた。今回発表した研究成果は、複写機や光学製品で培った回路設計技術を生かしたものだという。
なお、リコーICT研究所の研究グループによる今回の研究成果は、米国コーネル大学が運営する論文投稿サイト「arXiv.org」で発表された。
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