深層学習AIをエッジで動かす、東芝と理研がスパース化現象でパラメータ8割削減:人工知能ニュース
東芝と理化学研究所が、深層学習(ディープラーニング)によって得られるAI(人工知能)である「深層ニューラルネットワーク(DNN)」のコンパクト化技術を開発。DNNの性能を維持したままで、学習した結果であるパラメータを80%削減できる。
東芝と理化学研究所(以下、理研)は2018年12月17日、深層学習(ディープラーニング)によって得られるAI(人工知能)である「深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Networks)」のコンパクト化技術を開発したと発表した。DNNの性能を維持したままで、学習した結果であるパラメータを80%削減できる。これにより、エッジデバイス上で高精度な音声や画像などの認識処理を動作させられるようになるという。自動運転向け画像認識システムなど組み込み機器やエッジデバイスにおける高度なDNNの活用に向け、2020〜2021年ごろをめどに実用化を目指す。
東芝は、深層学習を行う際に、DNNの一部のパラメータが自動的にゼロ近傍に収束する「スパース化現象」を発見し、理研と共同でその発生原理を解明した。学習後にゼロとなったパラメータは認識結果に影響しないことから、学習後にそれらのパラメータを削除することでDNNのコンパクト化を実現した。
公開データセットを用いた実験では、開発したDNNのコンパクト化技術が、従来技術よりも認識精度の低下を抑えつつ、約80%のパラメータを削減できることを確認した。さらに、パラメータ削減率を調整し、DNNのサイズを柔軟に変更できる方法を開発した。
スパース化現象が起こる学習条件は3つある。1つ目は、DNNの表現力を高めるために一般的に導入される非線形関数ReLU(Rectified linear unit)を活性化関数として用いる場合だ。2つ目は、学習データへの過剰適合を抑制するために導入される正則化関数(L2 Regularization function)として、パラメータの2乗ノルム(ベクトルの長さ)を用いる場合である。そして3つ目は、パラメータ最適化手法の1つで確率的勾配降下法と呼ばれる「Adam(Adaptive moment estimation)」を用いる場合になる。
これらは一般的に用いられる学習条件だが、スパース化現象を発生させることは今まで知られていなかった。スパース現象を利用することで、学習後の不要なパラメータの削除により、従来に比べて手軽にDNNをコンパクト化できる。
ニューラルネットワークは、人間の脳の生物学的な仕組みを模したAIの計算モデルあり、近年ではこのネットワークを多層構造化したDNNを用いることで、より複雑で大規模な認識処理を行うことが可能になりつつある。ただし、高い性能を実現するDNNは、大規模で複雑化する傾向があり、演算能力やメモリ量が限られたエッジデバイス上で動作させることが困難だ。DNNをコンパクト化する技術が複数の研究機関から提案されているものの、特別な処理や追加学習が必要となるなど、手間がかかることが課題になっている。
スパース化現象は一般的に用いられる学習条件によって起こることから、他の技術よりも容易にDNNをコンパクト化できる可能性がある。
なお、開発技術は東芝と理研が2017年4月に設立した「理研AIP−東芝連携センター」の成果になる。両者は同技術の詳細について、2018年12月17〜20日に米国フロリダ州で開催される機械学習の国際会議である「IEEE International Conference on Machine Learning and Applications(ICMLA) 2018」で発表する予定だ。
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