日立アプライアンスが再生医療市場に参入「ソリューション事業の第1弾」:製造業IoT
日立アプライアンスは、東京・日本橋に開設した「再生医療技術支援施設」を報道陣に公開。大学や研究機関、製薬メーカーなど向けに、iPS細胞に代表される再生医療に用いられる細胞加工を行うためのクリーンルームを提案する他、それらの顧客や、再生医療に用いる機器メーカーとの協創の場として活用する方針だ。
日立アプライアンスは2018年12月6日、東京・日本橋に開設した「再生医療技術支援施設」を報道陣に公開した。大学や研究機関、製薬メーカーなど向けに、iPS細胞に代表される再生医療に用いられる細胞加工を行うためのクリーンルームを提案する他、それらの顧客や、再生医療に用いる機器メーカーとの協創の場として活用する方針。同年12月7日に本格稼働を始める。既に約30の大学や研究機関、企業が、同施設の利用を予定しているという。
施設公開に先立ち、日立アプライアンス 社長の徳永俊昭氏が登壇し、同社の事業戦略について説明した。徳永氏は「日立グループはIoT時代のイノベーションパートナーとして4つの事業分野に注力しており、日立アプライアンスはアーバン分野に属している。その目的は『世界中の人々のQoL(Quality of Life)向上への貢献』だ」と語る。
その上で、2019年4月1日付で日立コンシューマ・マーケティングと合併し、従来の製販分離から製販一体の体制へ移行する新会社の目標を「このQoL向上に向け『生活ソリューションカンパニー』となる」(徳永氏)とした。続けて同氏は「そのためには、現在の柱であるプロダクトアウト型の事業に加えて、第2の柱となるソリューション事業の創生が必要だ。再生医療関連事業は、このソリューション事業の第1弾と言っていい」と説明する。
セントラル滅菌+HEPAボックスや空調機器の内部の滅菌が可能
今回公開した再生医療技術支援施設は、同社の空調機器とSteris製の過酸化水素滅菌装置の組み合わせにより、医薬品製造のGMP規格でグレードBという高い清浄度が求められる4つのクリーンルーム内の滅菌を同時に行うことができる。これに加えて、HEPAボックスや空調機器の内部の滅菌も可能なことが最大の特徴になる。「従来は部屋ごとにある滅菌装置を使って、それぞれで滅菌するのが一般的だった。最近では、複数のクリーンルームの滅菌を行えるセントラル滅菌も幾つか例があるが、HEPAボックスや空調機器まで同時に滅菌できる例は他にない」(日立アプライアンス 空調サービスシステムエンジニアリング本部 東日本システムエンジニアリング部(再生医療推進担当)担当部長 兼 工事にグループ担当の佐藤祐一氏)という。
また、日立アプライアンスが業務用空調機器向けのIoT(モノのインターネット)ソリューションとして展開している遠隔監視サービス「Exiida」の機能も備えている。再生医療における細胞加工は数週間かかると言われ、その間にクリーンルームの清浄度を維持する空調機器が停止すると細胞加工に問題が起きてしまう。そういった事態を避けるためにも「Exiidaによる予兆診断は不可欠」(佐藤氏)としている。
同施設は、日立アプライアンスの空調機器以外にも、さまざまなパートナー企業との協創に基づくソリューション提案の場にもなっている。Steris製の過酸化水素滅菌装置の他にも、日本軽金属の子会社・日軽パネルシステムが、クリーンルームの壁材として目地幅を従来比7分の1の1mmに狭めたフラットパネルを提供している。また、GMP規格で最も厳しいグレードAの清浄度を実現できる日立産機システムの再生医療用キャビネットや、同キャビネットと直接つながるローツェライフサイエンスのインキュベーター、ソニーのセルソーター、Cyfuseの神経細胞作製用3Dプリンタなども設置している。今後も、再生医療に求められるさまざまな機器を導入する方針だ。
日立アプライアンスが手掛ける再生医療関連事業としては、クリーンルームとそれに必要な空調機器の企画、設計、施工、保守、定期バリデーションになる。佐藤氏は「2021年度時点で再生医療関連設備の国内市場規模が900億円、そのうち構造設備が200億円と見込んでいる。当社の同年度における売上高目標として、現在の2倍強となる30億円超を目指したい」と述べている。
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