「透ける電池」の使い道は? 黒子から脱却できるか:組み込み開発ニュース
日本電信電話(以下、NTT)は、「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」の報道陣向け先行公開において、光透過性を有する二次電池「透ける電池」を披露した。電力を供給する“黒子”として用いられてきた電池を従来とは異なる形で利用できる可能性がある。
日本電信電話(以下、NTT)は2018年11月26日、「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」(同年11月29〜30日開催予定)の報道陣向け先行公開において、光透過性を有する二次電池「透ける電池」を披露した。電力を供給する“黒子”として用いられてきた電池を従来とは異なる形で利用できる可能性があるとして、2019年度にさらなる研究開発を進めた後に用途開発を検討する考えだ。
今回展示した透ける電池は、集電層と負極、電解質が透明で、正極が褐色の材料から構成されている。材料の詳細は公開していない。これらの材料を用いるとともに、光の吸収と反射を抑制しやすい構造になるように電極を作製した。
光透過特性は平均約23%で、一般的なサングラスに相当する。外形寸法が9×5cmの場合、二次電池としての性能は平均電池電圧が1.7V、放電容量が0.03mAh(電流密度0.01mA/cm2)となる。この放電容量により、市販LEDを5分間点灯できることを確認したという。外形寸法を一般家庭の掃き出し窓1.5個分とすることで、コイン電池のCR1025と同等の放電容量が得られる。また、充放電が可能な二次電池としての特性を有し、充放電を100回繰り返した後もLEDの点灯が可能だった。
曲げられないガラス板形状の他、電極を導電性フィルム上に成膜し、電解質をゲル化することで、透けて曲がる電池も開発できた。光透過特性や二次電池の性能は、ガラス板形状とほぼ変わらない。
透ける電池の最大の特徴は、やはり“透ける”ことだ。現時点で光透過特性は25%だが「理論的には50〜60%も可能」(NTTの説明員)。今後は、IoT(モノのインターネット)活用をはじめ、従来の電池の使い方とは異なるさまざまなデバイスへの適用を検討していくとしている。
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