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植物工場のコツは徹底した運用コストの低減モノづくり最前線レポート

農作物の生産、加工、流通にかかわる技術や製品が展示される専門展示会「アグリ・ビジネス・ジャパン2018」(2018年9月26日〜28日、東京ビッグサイト)の講演に、新日邦 808FACTORY アグリ事業部 事業部長の甲斐剛氏が登壇。「植物工場ビジネスの成功者に聞く事業化の秘訣」をテーマに、同社が展開する大規模完全人工光型植物工場「808FACTORY」の状況を紹介した。

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 農作物の生産、加工、流通にかかわる技術や製品が展示される専門展示会「アグリ・ビジネス・ジャパン2018」(2018年9月26日〜28日、東京ビッグサイト)の講演に、新日邦 808FACTORY アグリ事業部 事業部長の甲斐剛氏が登壇。「植物工場ビジネスの成功者に聞く事業化の秘訣」をテーマに、同社が展開する大規模完全人工光型植物工場「808FACTORY」の状況を紹介した。

異業種から植物工場に新規参入

 植物工場は一時的にブーム的な盛り上がりを見せたものの、事業採算性が取れずに撤退する企業が続出。事業運営のかじ取りの難しさが指摘されている※)

※)関連記事:植物工場ベンチャー大手が倒産、新工場の歩留まり安定せず

 その中でも新日邦は採算性を確保してきた数少ない成功企業の1つである。新日邦はもともと、パチンコホール経営やホテル事業、太陽光発電事業などを展開してきたが、2012年に新規事業としてアグリ事業部を立ち上げ植物工場事業に参入した。

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新日邦 808FACTORY アグリ事業部 事業部長の甲斐剛氏

 立ち上げ当初は担当者は甲斐氏1人で、全てを単独で切り開いてきたという。この後、同年に既存の人工光の植物工場(日産1200株の生産能力)を買収。2014年には、完全人工光型植物工場「808FACTORY」を建設した。工場面積は1400m2、栽培室面積1000m2。生産品目はレタスなどを中心とした葉菜類全般で、生産能力は日産9000株(リーフレタス)だという。さらに2017年には第2工場(日産1万株の生産能力)を建設し、現在これらの合計で日産2万株の生産能力を持つ。

 設備についてみると、第2工場の栽培室(面積1000m2)には12段の栽培水槽があり、栽培照明はLEDを使用し、NFT(Nutrient Film Technique、浅く培養液を流し続ける方法)栽培方式を採用している。

 工場敷地には太陽光発電システムを敷設。工場の屋上設置分あわせて700kWの発電出力があり、これの発電能力は工場の消費ピーク電力に匹敵する。また「建物は基本的に窓がない。高断熱構造であるなど、管理が重要な植物工場としては必要なスペックだ。こうした取り組みは、後の事業運営において重要となる」と甲斐氏は強調する。

運用コストの低減策とロボットの導入

 これらのように植物工場の事業運営でまず必要になるのが、コスト低減である。露地栽培と異なり植物工場は基本的に圧倒的に運用コストが大きくなる。そのため、まず運用コストをどこまで低減できるかということが重要な要素となる。

 「808FACTORY」では、その他のコスト削減および省力化策として、植え替え用の自動移植ロボットを開発している。「運用コスト低減策として、まず電気料金については蛍光灯をLEDに替えたことで低減できた。もう1つは人件費の問題があった。それまでは人の手で種まき、植え替え、収穫を行ってきた。このうち植え替えだけでも、全体で1日2万株あり、それを1つ1つやっていたらかなり大きな時間が必要となる。植え替えは比較的単純な作業であり、この部分を機械化するだけで労働時間が削減できる。自動移植ロボットを2台導入し、これで5〜6人分の人件費を削減する効果があった」と甲斐氏はロボット導入の効果について説明する。

 この他、収穫までの日数についても「ここ4年間で同じ大きさまで育成する時間を5〜6日短縮している。いかに成長速度を上げて、より効率を高めるための研究を行っている」(甲斐氏)とし、リードタイムの削減に取り組んでいるという。現状では「収穫までの日数は40日を切っている」(甲斐氏)とし、今後はさらに短縮を目指す考えだという。

 さらに、包装工程にも金属検出や重量データを測定する機械を導入し、自動化とともに食品工場に近い衛生度とトレーサビリティー確保に取り組んでいる。栽培技術を高めるため、コンベヤーを通過するときにウエイトチェッカーで1株ずつデータが、取れるような仕組みになっている。重量をそれぞれ測ることで、採用した栽培技術が成功したかどうかを評価することができる。

 「消費者が植物工場で生産された野菜に求めるのは、露地野菜に対しての絶対的な安全性と安心である。当社の野菜は洗わずに食べられるということをアピールしており、それを担保するためにも、初期費用と時間がかかるが、衛生管理設備を整備することは必須だった」と甲斐氏は述べている。

洗わなくても鮮度が長持ち

 808FACTORYブランドでは4種類のレタス(グリーンリーフ、ロメイン、シルク、フリル)を栽培している。

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植物工場でよく採用されるレタス(写真はイメージです)

 同社製品の特徴の1つには、露地レタスに負けない栄養素を含有しているところにある。リーフレタスの場合、βカロテンは露地野菜と同じで玉ねぎの約10倍含まれているという分析結果が出ている。また、農薬検査302項目非検出、外部からの飛散汚染リスクもないなど、残留農薬、異物混入リスクが低減できている。

 さらに洗わなくても安心で鮮度が長持ちするという特性もある。これは、細菌数が少ないことから腐敗菌が増殖しないことや、土や虫、農薬などの付着が無いためだ。味の面でもストレスのない環境で育っていることから、苦みやえぐみが抑えられている。野菜本来の甘みがあり、葉が柔らかく食べやすい。

 主な販売先は小売りでは静岡県内を中心としたスーパーや、業務用として総菜、外食向けに納品している。天候に左右されずに安定供給(需要の変動)でき、清浄度が高く、異物リスクが少ないことなどから支持されているという。また「小売り、業務用の販売比率のバランスを取るようにしている」(甲斐氏)と、経営面でのリスク分散にも取り組んでいる。

 また、テレビCMなども積極的に行っており、その内容も「パンに挟んで食べるときも、洗わずに素早く便利に利用でき、保存期間も長いなど、消費者からの声を取り入れたものとしている」と甲斐氏は述べている。

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