シリコン負極のベンチャーにルノー日産三菱が出資、1分で80km分の充電を実現:電気自動車
ルノー・日産自動車・三菱自動車が運営するベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」は2018年11月13日、リチウムイオンバッテリーの電極技術を開発する米国カリフォルニア州のENEVATE(エネベート)に投資を行ったと発表した。
ルノー・日産自動車・三菱自動車が運営するベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」は2018年11月13日、リチウムイオンバッテリーの電極技術を開発する米国カリフォルニア州のENEVATE(エネベート)に投資を行ったと発表した。エネベートはシリコンベースの負極に強みを持ち、5分間でバッテリー容量の75%まで充電することを実現するという。この技術を活用し、給油と同程度の時間で超急速充電を行えるリチウムイオンバッテリーの実現につなげる。
エネベートは、リチウムイオンバッテリー技術のライセンス供与を行う。−40℃までの低温環境での充放電やコストの低さ、従来のリチウムイオンバッテリーをしのぐ安全性も達成しているという。生産プロセスは、既存の大量生産プロセスと互換性を持つ。アライアンス・ベンチャーズ以外にも、住友商事グループ会社のPresidio Ventures、Samsung Electronics(サムスン)、Lenovo(レノボ)、LG化学などが出資する。
アライアンス・ベンチャーズと、アライアンスのオープンイノベーションを担当するアライアンス グローバル バイスプレジデントのフランソワ・ドーサ氏は、「今回の戦略的投資により、エネベートが特許を持つ電極技術の開発を後押しする。この重要領域で開発を継続的に行うことは、われわれの電動化戦略を加速させるだろう」とコメントを発表した。
エネベートの電極は材料の70%以上がシリコンとなる。質量エネルギー密度は車載向けでは750Wh/l(リットル)以上だとしている。急速充電により、5分間で走行距離390km相当、もしくは60秒間で80km相当の充電が可能だという。民生向けでは、UN 38.3、UL 1642、UL 2054、CTIA / IEEE 1725、IEC 62133およびIEC 61950などの国際規格の認定を取得した実績がある。
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