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マツダのからくりを通じた人づくり、工場は創意工夫と成長の場からくり改善(3/3 ページ)

工場では多品種化と生産性向上の両立が求められており、そこでは人がより効率よく安全に作業するための工夫も欠かせない。マツダは長年からくりを活用した作業改善に力を入れてきた。同社がからくりを用いた改善に取り組む理由を聞くとともに、「からくり改善(※)くふう展2018」(主催:日本プラントメンテナンス協会)に出品された同社の作品の一部を紹介する。

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12本のボルトを一気に仮締め

 従来は手作業で行っていたトランスミッション組み立てにおけるボルトの仮締め作業を一気に行えるようにしたのが、「マッハ締付けジョーズ」だ。トランスミッションを製造している防府工場中関地区の作品になる。

図7(左):トランスミッションのエンドカバーに取り付けるボルトの仮締めを一気に行う。作業の早い人でも30秒かかっていたのが、誰でも10秒以内でできるようになったという。、図8(右):ベルトを介してセンタープーリーの回転を12軸に伝える。工夫した点は不均一なボルト穴の配置への対応だという。

 トランスミッションのエンドカバーの取り付けでは、ねじ穴が浅くボルトが倒れるため仮締めが必要になる。従来、作業の早い若手でも12本のボルトの仮締めには30秒かかっていたという。これをベルトとプーリーを利用したからくりによって、10秒以内で仮締めできるようにした。

 まずスロープを流れてきたボルトがプレートの12の穴に自動ではまる。続いて上から吊り下げたマグネットの入ったソケットをボルトに密着させる。このソケットをガイドピンに沿って下ろし、上部のハンドルを回せば一気に仮締めが完了する。また作業に掛かる力も非常に軽い。

 仮締めをする際は、ボルトを回すためのベルトがセンタープーリーを介して動き、12軸を一斉に回転させる。ボルト穴が不均一な配置のため、調整可能なテンション機構を1つ、ベアリングを入れたテンション機構を5つ配置したという。

誰でもシェルパレットを運搬

 鋳型のパレットの運搬をレバーの開閉だけでできるようにした装置が、本社工場から出展された「楽々まえちゃん」だ。この装置は女性を含むメンバーが開発、解説も女性が行っていた。


図9:鋳型を載せるパレットをレバーを動かすだけで運搬できるようにした。黄色がパレットを1枚ずつ切り出すらせんねじ、緑はかさ歯車。(作品はミニチュア)

図10:レバーを動かすと傾斜によってパレットが移動する。パレットがある位置まで進むとストッパーが解除され、かさ歯車を介したチェーンの動きにより、らせんねじが動く。

 砂型を載せるためのパレットは1枚15kgで、男性でも重く大変さが伴う作業だった。一方パレットに乗せる砂型の重量は340kgとなる。そこでパレットの取り出しと移動を、重力と元からある動力を使用して、レバーの切り替えだけでできるようにした。

 積み重ねられたパレットは、4つのらせんねじによって1枚ずつ切り出され、搬送レーンに送られる。レーンは5度の傾斜があり、傾斜の先にあるチェーンについているストッパーを押し下げると、チェーンの動きの向きがかさ歯車によって変換され、スクリューの動力になるという仕組みだ。

 「鋳物の現場なので、らせんねじは自分たちで制作した」という。まず3D CADで、パレットを1枚だけ取り出せる幅などを検討してモデリングし、3Dプリンタで出力して確認した後、実物を作成したということだ。これにより「女性や高齢者でも作業ができるようになった」と話す。

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