AIや機械学習を駆使して、パナソニックが新材料開発をデジタル化:材料技術
パナソニックは、創業100年を記念したプライベートイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日、東京国際フォーラム)を開催している。会場では同社のマテリアルズインフォマティクスに関する取り組みについて発表した。
パナソニックは、創業100年を記念したプライベートイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日、東京国際フォーラム)を開催している。会場では同社のマテリアルズインフォマティクスに関する取り組みについて発表した。
パナソニックは実験ベースで取り組んできた材料開発の仕組みにAI(人工知能)や機械学習、シミュレーション、スーパーコンピュータなどをフル活用した、マテリアルズインフォマティクスに取り組んでいる。同社による車載用リチウムイオン電池の新材料開発などで活用する。
新材料開発において、従来の実験ベースでは、時間もコストもかかり、成果に結び付く確率も低いが故に多くの失敗を地道に重ねるしかなかった。このシステムでは、過去事例を学ばせたAIによって候補の絞り込みを実施し、バーチャルでのシミュレーションを活用することでコストを削減しながら時間も短縮できる。さらに、誕生した新材料を活用した製品のデータも取り込みながら、システムを成長させていく。
基盤となる無機材料データベースには同社内で長年蓄積した成功・失敗データやベテラン研究者のノウハウが蓄積されている。国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)や無機結晶構造データベース(ICSD)といった国際的なオープンデータも取り込み、論文のデータマイニングも実施する。
上記のデータベースを活用し深層学習やベイズ最適化、GAN(Generative Adversarial Network)といった機械学習技術を駆使して解析を実行する。スーパーコンピュータの「TSUBAME」や「ABCI」、「京」なども活用する。これらの大規模計算基盤はクラウド上にある。解析を経て、有効な新材料の候補を絞り込んだ上、合成実験やナノスケール解析など実施する。さらに、新材料を組み込んだデバイスや実機評価やマルチスケール解析の結果をデータベースへフィードバックする。
同社ではこの仕組みを取り入れることで「新材料開発から製品化までの期間が半減できる」と見込んでいる。「このシステムの開発においては、材料開発や解析シミュレーションといった分野のスペシャリスト同士のやりとりが重要だったが、双方で思想や言語が違うため、コミュニケーションのやり方を工夫した。両方の事情に精通した人材が橋渡し役となっている」(同社)。当面は、「新材料を世の中に送り出すこと」(同社)が目標となる。このシステムは社内で運用が既に始まっており、詳細は明かせないが、実際に新材料が誕生しつつある段階であるという。以後数年間で、何かしら発表できるだろうということだ。
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