速く走らないEVがターゲットの電動パワートレイン、無人運転車も視野に:電気自動車
パナソニックは2018年10月30日、同社の100周年を記念して行う全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)において、ドライバーレスで走行する電気自動車(EV)のコンセプトモデル「SPACe_C(スペースシー)」を披露した。
パナソニックは2018年10月30日、同社の100周年を記念して行う全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)において、ドライバーレスで走行する電気自動車(EV)のコンセプトモデル「SPACe_C(スペースシー)」を披露した。
同社が開発した低電圧の電動パワートレインを採用したプラットフォームを、用途に合わせて架装を載せ替えて使用する。パートナー企業や自治体と協力しながら、将来の用途を考案していきたい考えだ。
スペースシーに搭載する低電圧の電動パワートレインは、2018年1月に開催された「CES 2018」で披露したのと同じものだ。車載充電器やインバーター、DC-DCコンバーターを統合した電源システムと駆動用モーターで構成されている。駆動用モーターは、インバーター単体もしくは電源システムと一体化することができる。2018年度の量産を予定している。
パナソニックの電動パワートレインの特徴は、電源電圧が48Vであることだ。低速域でのみ走行する四輪もしくは二輪に向けて提案している。乗用車より上の車両セグメントのEVでは高電圧のシステムだが、低電圧にすることで安全性を確保しやすく、低コストに開発できる。
低電圧の超小型EVの開発は中国で活発だ。しかし、品質や安全性が確保されていない状態でEVを製品化した企業が多かったことが問題となり、低電圧のEVに関する安全基準が導入される。規制が強化されるものの、小口配送などの用途で低電圧の超小型EVの開発は引き続き活発に行われる見通しだという。「規制をきっかけに、中国企業は信頼できる駆動用モーターのサプライヤーを探し始めており、ビジネスチャンスになる。低電圧の超小型EVの市場規模は140万台まで拡大するといわれている」(パナソニックの説明員)。
スペースシーは、架装とプラットフォームを分けており、用途に合わせてさまざまな車室をつくることが可能だ。また、車両の稼働率を上げるため、時間帯や利用スケジュールに応じて架装を載せ替えることも想定している。これにより、少ない台数でさまざまな移動サービスを提供していくコンセプトだ。高速で移動することを必要としない移動サービスも多いと見込み、スペースシーのような車両も低電圧の電動パワートレインの用途として視野に入れている。
ただ、パナソニックは車体を手掛けた実績がないこともあり、架装部分まで自社開発することにはこだわらない。また、無人運転車に関する安全基準なども確立されていない。規制の動向を見極めながら、さまざまな企業と協力して、架装部分を作り込んでいく方針だ。
今回、CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018では、電動パワートレインの高出力版も出展した。CES 2018で披露した仕様から出力を2倍に増やした。CES 2018で発表したのは出力が最大で8kWだったため、高出力版は最大出力16kWとみられる。空冷で冷却できる点も特徴だという。2020〜2022年の量産を見込んでいる。機電一体の駆動用モーターの高出力化では、EVの車載充電器の小型化、高出力化で培った放熱対策のノウハウが生かされている。
高出力版の駆動用モーターを使うことで、従来の仕様では2モーターシステムとなっていたのを、1モーター化することができる。スペースシーのようにヒトやモノを運ぶ車両で一定の室内空間を確保するには、電動パワートレインの出力を確保しながら小型軽量化とすることが必要だと考え、開発を進めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- EVの駆動系でティア1目指すパナソニック、狙うは「低電圧の超小型モビリティ」
電気自動車(EV)のパワートレインに注力するパナソニック。ティア1サプライヤーとして受注を狙うのは、短距離移動が前提の超小型EV。中国などで一定の台数の規模を見込むビジネスだ。 - 好調パナソニック、テスラ「モデル3」の遅れで売上高900億円減も電池に勝算あり
パナソニックは2017年度第3四半期の決算を発表。上期から引き続き主要全部門で増益を実現するなど、好調な結果を示した。ただ一方で、協業するテスラの普及型EV「モデル3」の生産遅れにより、売上高で900億円、営業損益で240億円のマイナス影響があったことを明らかにした。 - パナソニックの車載事業が世界トップ10入りへ、2021年度に売上高2.5兆円
パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社は、車載事業の売上高が2018年度に2兆円を達成することがほぼ確実な状況にある。2021年度には売上高2兆5000億円を達成し、自動車部品メーカートップ10入りに挑戦するという。 - 車載用“角形”電池でもトップに、パナソニックがトヨタの電池パートナーに名乗り
トヨタ自動車とパナソニックは、車載用バッテリーについて協業の可能性を検討する。両社で高性能リチウムイオン電池や全固体電池を開発する。パナソニックはテスラに供給する円筒形だけではなく角形でも車載用電池で業界ナンバーワンを目指す。トヨタ自動車は2030年までに電動車の販売を2016年比3.7倍に増やしていく中で、パナソニックと協力して電池の競争力向上と安定供給を実現していく。 - 大規模化する車載ソフト、パナソニックは品質とセキュリティを確保できるのか
日本シノプシスが主催するユーザーイベント「SNUG Japan 2018」に、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 インフォテインメントシステム事業部 主任技師の古田健裕氏が登壇。「パナソニック オートモーティブ事業部門におけるソースコード品質向上の取り組み」と題して講演を行った。