カシオが初代G-SHOCKのベゼルを光成形で、しかもリアルな素材を使って複製:成形技術(2/2 ページ)
カシオ計算機(カシオ)は2018年10月31日、初代「G-SHOCK」機種の期間限定レストア(修復)サービスを開始すると発表した。対象機種は1983年に発売した「DW-5000C」と1987年に発売した「DW-5600C」で、対象部品はベゼル(時計の盤面周辺にあるカバー)とバンド、電池。
光成形機による成形
ペレット(成形材料)は通常、射出成形などで用いる3〜5mmでは熔融しづらいため、Amolsys H250の仕様でも定めている0.5〜1mm程度の粒度にあらかじめ加工しておく。
シリコン型にペレットを仕込んだ後、しっかり型を閉じて光成形機にセットする。成形機の近赤外線レーザーが半透明のシリコンを透過することで樹脂のみを溶融した後、冷却して固化させる。成形機から型を取り出した後も、ファンとヒートシンクを用いてしっかりと冷却する。このプロセスのため、型の素材色としては透過色である必要がある。
シリコン型は部品を剥がすたびにへたっていくが、20〜30回ほど使用できるという。また光成形の処理には5分程度、冷却固化には20分程度かかる。離型時のバリは製品の体裁面に影響しない外側に出すように制御している。
離型やバリ取り、文字部(微細な凹部になっている)の色入れといった人の手作業による仕上げ工程が1時間半程度と最も時間を割く。また製作数は1日におおよそ20個、せいぜい30個ほどのペースになる見込みだ。文字の色入れについては、一部の高級機種製品では手作業で行われており、今回のサービスでも実際の製品における作業に携わる担当者が対応する。
今回は9600円(税抜き)で提供される期間限定のアフターサービスである。また金型が不要とはいえ、手法開発にもそれなりに費用がかかっており、人の手作業による工程も多い。故にカシオ側にとっては大きな利益は見込めないという。売り上げや対応件数などの目標も特に立てていない。今回は顧客サービス(イベント)としての側面が強く、G-SHOCKファンの要望に「丁寧な職人仕事」で応えることで、絆(きずな)をより強めていきたいということだ。今回のサービスの反響次第では、他機種での対応も検討する。
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