デンソーが導入したカシオの2.5Dプリンタ、エンボス加工が50分の1の費用と時間で:メカ設計と試作
電装部品大手のデンソーがカシオの2.5Dプリントシステム「Mofrel(モフレル) DA-1000TD」を導入。デンソーの要素技術開発および製品試作で活用していく。
電装部品大手のデンソーが2018年4月から、カシオ計算機(カシオ)の2.5Dプリントシステム「Mofrel(モフレル) DA-1000TD」を導入した。モフレルは専用紙「デジタルシート」に近赤外線を照射することで塗布してある熱膨張性マイクロカプセルが発泡して隆起するという同社独自の「電磁波造形技術」を採用し、皮や紙、木材といった素材、エンボスやシボなどの加飾の面性状や質感を細やかに表現可能なことを特色とする(関連記事:カシオの2.5Dプリンタで触感を伴う試作品を手軽に製作)。デジタルシートの基材には上質紙、PET、PO(ポリオレフィン)がある。同製品の本体価格は500万円(税別)。
デンソーは要素技術開発および製品試作でモフレルを活用していく。同社は「モノづくりにおける新たなイノベーションを起こすツール」として2.5Dプリントシステムに着目したという。アイデアを短時間かつ低コストで具現化できる点を評価し、導入に至ったとのことだ。
モフレルは操作も簡易になっており、一般的な紙のプリンタの作業にひと手間が掛かる程度。ユーザーは液晶画面に出てくるガイダンスに従って作業すればよく、事務機器の操作知識程度で利用できる。
カシオの試算によれば、ファブリック素材のエンボス加工試作の場合、従来の金型を起こす製法ではA3の仮型製作費用が約25万円、製作期間約1.5カ月かかっていたものを、モフレルを使用することで金型レスになることからコストは約5000円(内訳はシートが2000円、インクが200円、本体償却費が2800円)、製作期間は約1日で収まるという。コストと試作期間ともに、従来手法の約50分の1ということになる。
同社では現在、薄い膜状のスイッチ(メンブレンスイッチ)に用いる表面シートの出力ができるよう開発を進めているという。
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