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IoTから脱落した巨人インテルの蹉跌、かくもIoTビジネスは難しいIoT観測所(50)(3/3 ページ)

IoTの団体や規格/標準についての解説をお届けしてきた本連載も最終回。最後は、団体ではなくインテルという特定の企業のこの数年の動向を紹介しながら、IoTというビジネスを総括してみたい。

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“Data-Centric Company”への移行は敗北宣言か

 では、インテルはどうするのか。2018年1月のCESで、同社 CEO(当時)のブライアン・クルザニッチ(Brian Krzanich)氏は「インテルが“Semiconductor Company”から“Data-Centric Company”になる」と宣言した。これをどう捉えるかは難しいが、ことIoTに関して言えば「デバイスにフォーカスするのではなく、デバイスからのデータにフォーカスする」ということになる。要するに、IoTエッジとIoTクラウドでのデータプロセッシングを提供するメーカーに、最適な半導体を売るという話であって、何が“Data Centric”なのか正直理解に苦しむ。

 筆者からすれば、本当にData Centricというのであれば、PaaS(Processor as a Service)的に、計算量(あるいはデータ処理量)に応じて課金をするプラットフォームを構築して提供しますという話になりそうだと感じる。しかし実際には、サーバ向けのプロセッサを強化しますという以上の話ではなく、これは単にIoTというビジネスを自分でハンドリングできませんでした、という敗北宣言に近いと感じている。

 一応、アップル(Apple)との5Gモデムビジネスのおかげで、5Gのコネクティビティティに関しては他社よりもちょっとだけアドバンテージがあり、そこはIoTに向けてビジネスを強化してゆく余地がある。が、それ以外のIoTに関しては既にインテルは自社でリーダーシップを取ることはできず、また自身もその気をなくしているようだ。むしろ同社はAIに注力しており、これを生かす道具の1つとしてIoTを扱っている、という風に感じられる。

 もっともそのAIも、今後どこまで注力し続けるのか正直先は見えない。何しろクルザニッチ氏の辞任後、既に4カ月ほど暫定CEOが運営し続けているというのは、この規模の会社としてはかなり珍しい。そして、新CEOがどんな方向性を打ち出すのかが見えない以上、例えば2019年あたりからAIをも諦める路線になってゆく可能性もないとはいえないからだ。

 ただハッキリいえるのは、インテルはIoTから脱落したということだ。要するに、インテル規模の資金力とエンジニアリング能力をもってしても、IoTというビジネスでリードを取れずに終わってしまう程度にIoTは難しい。単に標準化団体を作れば済むという問題ではないし、新技術や新製品を投入すればOKというものでもない。少なくとも、長期間にわたるコミットメントは必須であり、ただしそれさえも必要条件ではあっても十分条件ではない(グーグル(Google)の取り組みなどその好例だろう)。確かに規模は大きいが、そこでパイを獲得するのも猛烈に難しいのがIoTというマーケット、ということをインテルは身をもって示してくれたと思う。

(連載完)

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