CAEの代わりにAIでボンネットの構造を分析、頭部傷害値が誤差5%で一致した:車両デザイン(2/2 ページ)
ホンダは、ボンネットの設計効率化に向けて、CAEで構造解析を行う前に、ある程度の歩行者保護性能をAIで判定できるようにする取り組みを始めた。既に1機種に40時間かかっていた性能の予測を、10秒程度に短縮することに成功した。今後はさらにCAEとAIの誤差をなくし、近い将来に量産モデルの設計に適用することを目指している。
少ないデータ量でも一定の精度
学習には過去に開発した29機種を使用した。ボンネットの外板とフレームの2D画像を入力し、CAEで得られた頭部傷害値を教師データとした。歩行者保護性能の評価ではボンネット上に複数の打点を決めて行うため、打点にして1977カ所分のデータとなる。学習用のデータはボンネットの板厚や材質が全て同じ機種を選んだ。学習モデルの実装にはTensorFlowを用いた。
検証で使用したのは、ミニバン、SUV、セダンというボンネットの面積の大きさが異なる3機種で、打点にして合計269カ所のデータだ。それぞれの打点の頭部傷害値から全体の得点を算出し、この3機種について、歩行者保護性能をAIで予測した結果と、CAEで解析した結果を比較した。
目標としたのは、CAEとAIで得点の誤差が5%以下となることと、ボンネットの部位ごとの頭部傷害値の一致度が80%以上となることだ。検証の結果、得点の誤差はミニバンが5%、SUVが4%、セダンが4%だった。また、部位ごとの頭部傷害値の一致度は、ミニバンで80%、SUVで81%、セダンで76%という結果になった。使用できるデータが限られた中でも、一定の精度で予測できたとしている。
ただ、現状では量産モデルの設計に使用するには、特にボンネットの外周部分で予測の精度が不足しているという。ボンネットの外周はヘッドランプやフェンダーに接しており一定の強度があるため、頭部傷害値が高くなりやすい。今後は、ボンネットの外周部分の特徴量を抽出したデータを教師データに追加していく方針だ。また、歩行者保護性能の高い量産モデルの設計データだけでなく、頭部傷害値が高くなる場合のデータも学習に取り入れていくことが必要だとしている。
今回、ボンネットが歩行者保護性能の高い設計になっているかどうかについて、CAEではなくAIで一定の精度で検証できるめどが立った。伊藤氏はボンネット以外の設計にも適用できる可能性があるとしていたが、「まずはボンネットの設計で、実際の業務に使えるようにすることが最優先」と述べた。
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