JOLEDの事業戦略が次の段階へ、大型テレビ向けに印刷方式有機ELの技術を供与:製造マネジメントニュース
JOLEDは、大型テレビ向け有機ELディスプレイ製造を目指すメーカーなど向けに印刷方式の製造技術を提供する「技術ライセンス」を推進する方針を発表。併せて、デンソーなど4社を引受先とする第三者割当増資により総額470億円の資金調達を実施したことも発表した。
JOLEDは2018年8月23日、大型テレビ向け有機ELディスプレイ製造を目指すメーカーなど向けに印刷方式の製造技術を提供する「技術ライセンス」を推進する方針を発表した。併せて、デンソー、豊田通商、住友化学、SCREENファインテックソリューションズを引受先とする第三者割当増資により総額470億円の資金調達を実施したことも発表した。
【訂正あり】本記事は、初出時より訂正した箇所があります。
「技術ライセンス」の推進では、生産設備の開発設計を行うパナソニック プロダクションエンジニアリング、ディスプレイ製造工程で使われる各種装置と関連サービスを提供するSCREENファインテックソリューションズの3社で、主にテレビ向けを想定した、印刷方式による大型有機ELディスプレイ製造のための印刷設備の開発、製造、販売、サービスに関する業務提携契約を締結。印刷方式有機ELディスプレイの普及と有機ELテレビ市場の成長を取り込みを目指して、3社共同でビジネスを展開する。
「技術ライセンス」を展開する上で、JOLEDは印刷方式有機ELディスプレイ製造技術の提供や、技術導入のサポートなどを行う。パナソニック プロダクションエンジニアリングは、パナソニックグループのモノづくりを支えてきた生産設備の設計/開発や立ち上げ支援の経験と、JOLEDとの印刷設備の共同開発経験を生かし、顧客ニーズに合わせた印刷設備の設計/開発を担う。SCREENファインテックソリューションズは、ディスプレイ製造工程で使われる各種装置及びそれらに対するサービスを国内外で提供している経験とネットワークを生かし、パナソニック プロダクションエンジニアリングからのライセンスのもと、印刷設備の製造を行う他、販売/メンテナンスなどのサービスをJOLEDとともに展開する。
JOLEDは蒸着方式の有機ELディスプレイでは難しい中型市場から事業参入を始めており、ソニーの医療用モニター向けを皮切りに、2017年12月から21.6型4K有機ELディスプレイを出荷している。中型市場に事業参入した次のステップとしていたのが、テレビやサイネージなど大型市場における新事業モデルの構築だった。今回の「技術ライセンス」に向けた3社による提携は、“新事業モデルの構築”に当たるものだ。
デンソーが300億円出資
470億円の増資の内訳は、デンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。JOLEDは、調達した資金を基に、ジャパンディスプレイから譲り受けた能美事業所(石川県能美市)において、2020年から印刷方式有機ELディスプレイの量産を行う計画である。
なお、JOLEDの2018年7月1日時点での資本金は約609億円。増資により、JOLEDの出資比率は産業革新機構が38.9%、ジャパンディスプレイが25.1%、デンソーが19.7%などとなる。
【訂正:初出時はデンソーの出資比率を25%超としていました。本文は正しい数字に修正済みです】
JOLEDは今後、デンソーと車載向けディスプレイの開発や事業展開で協力していく。豊田通商からは、幅広いディスプレイ製品の販売でサポートを得ていく。住友化学とは、これまでも協力関係にあった有機EL材料の開発/供給において体制を一層強化する。SCREENファインテックソリューションズとは、「技術ライセンス」の展開におけるビジネス展開で協力していく。
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