NVIDIAの第8世代GPU「Turing」は、レイトレーシングとAI向けで2つのコアを採用:組み込み開発ニュース
NVIDIAは、コンピュータグラフィックスのイベント「SIGGRAPH 2018」において、第8世代のGPUアーキテクチャ「Turing(チューリング)」と、Turingを搭載するプロ向けGPUボードの新製品「Quadro RTX 8000/6000/5000」を発表した。
NVIDIAは2018年8月13日(現地時間)、コンピュータグラフィックスのイベント「SIGGRAPH 2018」(同年8月12〜16日、カナダ・バンクーバー)のカンファレンスにおいて、第8世代のGPUアーキテクチャ「Turing(チューリング)」と、Turingを搭載するプロ向けGPUボードの新製品「Quadro RTX 8000/6000/5000」を発表した。
Turingは、新たに開発したレイトレーシングに最適な「RTコア」とともに、第7世代アーキテクチャ「Volta(ボルタ)」から採用しているAI(人工知能)の処理に最適な「Tensorコア」を搭載している。RTコアとTensorコアを連動させるハイブリッドレンダリングにより、リアルタイムのレイトレーシングが可能になる。レイトレーシングの演算性能については、第6世代アーキテクチャの「Pascal(パスカル)」と比べて最大で25倍となる10GRays/秒まで高速化できる。また、現実世界をシミュレートする際の処理性能はPascal比で6倍に達するという。
Tensorコアは、AIで広く用いられている深層学習(ディープラーニング)の学習と推論に最適化したプロセッサで、最大毎秒500兆回のテンソル演算を可能にする。これにより、高品質な3Dグラフィックスの動画生成を可能にするDLAA(ディープラーニングアンチエイリアス)で、ノイズの除去や解像度のスケーリング、動画のリタイミングなども実現できる。
Turingでは、GPUコアのクラスタとなるSM(ストリーミングマルチプロセッサ)も新たなアーキテクチャを採用している。浮動小数点データパスと並行して実行する整数実行ユニットと、帯域幅をVoltaの2倍に拡張した新しいユニファイドキャッシュアーキテクチャを追加した。最大で4608個のCUDAコア(32ビットの浮動小数点演算ユニット)を利用すれば、Turingは1秒当たり16兆回の整数演算と並行して、最大で16兆回の浮動小数点演算が可能になる。
NVIDIA CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は「TuringはNVIDIAにとって、コンピュータグラフィックスにおけるこの10年でもっとも重要なイノベーションだ。ハイブリッドレンダリングはこの業界を変革し、驚くような可能性を切り開いて、より美しいデザインや、よりリッチなエンターテインメント、さらにインタラクティブなエクスペリエンスで私たちのライフスタイルを豊かにしてくれるだろう。リアルタイムレイトレーシングの登場はCG業界にとって聖杯ともいうべきものになる」と述べている。
「Quadro RTX 8000」の価格は1万ドル
Turingを搭載するQuadroは、GPUメモリとしてサムスン電子(Samsung Electronics)製の16GビットGDDR6を採用している。ハイエンドのQuadro RTX 8000はメモリ容量が48GBで、データ転送速度が最大100GB/sのNVLinkを用いると96GBまで拡張できる。CUDAコアは4608個、Tensorコアは576個。
価格はQuadro RTX 8000が1万米ドル、ミッドレンジの同6000が6300米ドル、ローエンドの同5000が2300米ドル。2018年10〜12月期の発売を予定している。
Turingと新たなQuadroの発表に合わせて、さまざまなグラフィックスソフトウェア企業もコメントを寄せている。製造業関連では、ダッソー・システムズの「CATIA」と「SOLIDWORKS」、シーメンスの「NX」といった3D CADツールベンダーが新たなQuadroのサポートを表明している。
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