MOTOROiDにおける3D設計の取り組み、ルール作りやプロセスの構築が肝か:日本橋系メカ設計屋がレポート(3/3 ページ)
3D CAD/CAMのエキスパートであるメカ設計者・管辰之助氏が「Siemens PLM Connection Japan 2018」のヤマハ発動機によるユーザー事例講演をレポートする。
難しいシンクロナスモデリングの運用
NXの特徴把握の中で、シンクロナスモデリングやダイレクトモデリングという言葉が出てきた。筆者は設計現場では通常、それらをむやみに使用しない方がよいケースが多いと考える。たった1人でも失敗すると多くの関係者を巻き添えにする場合があるからだ。NXを導入している企業では使用禁止にしていることも多い。当然、設計者が多ければ多いほど、その運用は難しくなる機能にもかかわらず、シンクロナスの使用可能箇所の定義をした、というのは驚きであると同時に同社のNXへ対する熱量のようなものを感じた。
履歴が長くなるモデルに関しても同様で、筆者はWAVEリンクはNX導入直後に教える内容ではないと考えていたが、非常にスマートな運用方法を導き出しており、筆者が考える「NXを新規導入するにあたり策定すべきルール」よりもはるかに高いところを歩んでいるのではないだろうか。
そして、おそらく新しい環境で苦労したであろうと容易に想像できる実際の設計者たちにも本当に頭が下がる思いだ。講演の中で「設計者は時間の制約から現行CADを使いたがった」と話していたが、開発環境が変わるということは設計者としては発狂するほどのストレスを感じるものだ。それを導入からこの短期間であそこまでのものを作りあげるというのは、いかに整然としたルール作りやプロセス構築のおぜん立てがあったとはいえ、並々ならぬ努力があったと思う。
3D化、NX導入という点において、登壇した三辺氏がどういった経歴、経緯でそのポストに就いたかは本人からお聞きしていないが、よくある現場を体験していない経営層や部門長が「えいや」で行う開発環境の変更とは正直雲泥の差を感じた。
さらなる開発効率の底上げに期待か
同氏はまとめの中でTeamcenterに限っては環境構築が行えず未着手であったことを残念がっていたが、ここまでの一連のスキームをこの短時間で構築してきたのであれば、恐らく何の問題もなく運用できるのではないかと感じた。また、Teamcenterを導入することにより、さらなる開発効率の底上げが期待できると考える。
同氏は最後に、「このMOTOROiDで得られたNX開発手法をMC開発部門にフィードバックをしていくことが一番大切だと思う」と締め講演を終えた。筆者も一個人として純粋にヤマハ発動機がこの次に生み出すものを見てみたいと期待に胸を膨らまし会場を後にした。
Profile
管 辰之助(すが たつのすけ)
1976年生まれ。株式会社管製作所代表取締役。NX Designer Certified Professional(NX認定技術者)
株式会社牧野フライス製作所にてCADCAMの技術営業に従事し、工作機械を扱うさまざまな業種の顧客に対し、3Dモデリングやツールパス作製手法を提供するCADCAMのスペシャリストとして活躍し、その後3Dプリンタの世界に魅了され、株式会社アイジェット(現DMM.com)へ入社し、最高技術責任者となる。
これらの経験を生かし、2017年に株式会社管製作所を設立。現在は加工・検査治具や筐体の設計を業務の主とし、自社製品の製作・販売や、開発現場内で開発効率向上のためのモデリング手法などのレクチャーを行う。
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