1日100検体以上解析可能な自動撮像装置を開発、早期がん発見に貢献:医療機器ニュース
HIROTSUバイオサイエンスと日立製作所は、両社が研究を進めてきたがん検査方法「N-NOSE」の検体解析に用いる「高スループット自動撮像装置」を発表した。同装置により、1日あたり3〜5検体だった解析処理が100検体以上解析できる。
HIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ)と日立製作所(日立)は2018年7月4日、両社が研究を進めてきたがん検査方法「N-NOSE」の臨床検体解析に用いる「高スループット自動撮像装置」を開発したと発表した。同月2日には、同装置による研究を加速するため、埼玉県比企郡に「HIROTSUバイオ・日立共同実験室」を開設した。
N-NOSEは、線虫の嗅覚機能を利用したがん検査方法だ。ヒロツバイオは、N-NOSEを用いて主要ながんを含む18種以上のがん検出に成功している。また、臨床研究で約900検体(がん患者検体約550、健常者検体約350)の解析を実施したところ、がん患者をがん患者と見分ける「感度」と、健常者を健常者と見分ける「特異度」の検知精度がともに約90%を示した。N-NOSEを用いれば、従来の腫瘍マーカーでは10%ほどしか検知できないステージ0〜1の早期がんでも、約90%を検知できる。
さらに日立は、4個の走性試験領域を持つ「マルチ走性試験容器」を開発し、同時に同容器に対応する処理性能に優れた自動撮像装置を試作した。これまで、手技による検体解析処理は1日あたり3〜5検体だったが、今回開発した高スループット自動撮像装置では、100検体以上の解析ができる。
オートローディング機構を搭載する同装置は、マルチ走性試験容器を1分ごとに1枚のスピードで撮像装置に取り込むことができ、最大10枚のマルチ走性試験容器を保持可能だ。また10分間の走性試験中、1分ごとに各マルチ走性試験容器を撮像できる機能も搭載する。これらの機能により、1日あたり100検体以上の解析が可能になった。
今後、両社はN-NOSEの2020年内の実用化を目指して研究を進め、同装置に関する評価と自動化技術を確立する。さらに共同実験室での連携体制を強化し、がんの早期発見に貢献する。
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