コングロマリットを価値に、日立が描く「つながる産業」の先にあるもの:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を中核としたデジタルソリューション事業の拡大を推進。その1つの中核となるのが、産業・流通ビジネスユニットである。日立製作所 執行役常務で産業・流通ビジネスユニットCEOの阿部淳氏に取り組みについて聞いた。
バリューチェーン全体へのアプローチ
MONOist 収益性向上への取り組みとしてバリューチェーン全体を最適化する取り組みも強化しています。
阿部氏 先ほども「Society 5.0」や「Connected Industries」の実現には産業間の連携により最適な姿を実現することが必要だということを話したが、そのためには、これまで個別の業務部門、業務システムで行われてきた業務をバリューチェーンとして1つのチェーンとして見た時に最適かどうかを考える必要がある。そしてそれを最適化する提案が重要だと考えている。
こうした取り組みの1つが、中国における製造・物流プラットフォームの提供だ。サプライチェーン全体の物流業務に対する見える化や効率化に貢献するプラットフォームを提供し、スマートロジスティクスを実現する。さらに今後は、それを物流だけでなく、製造の領域もつなげることで、より高度なスマートマニュファクチャリングが実現できるようにする。
一方で、空気圧縮機の製造・販売を手掛ける米国子会社Sullairとの協業で、AIを活用し、産業機械の最適な修理作業を自動提案するシステムなどを開発※)。今後は予防保全などの実現を目指し、アフターサービス業務の高度化に向けた取り組みを進めていく。また、日本の製造業の間でも大きな課題となっている製造業の品質保証体制に向けたサービス展開も進めていく。
※)関連記事:保全の再訪率半減、AI活用で最適な修理作業を自動提案する技術
こうしたバリューチェーンをつなぐ取り組みは、自社グループでさまざまな業種を抱え、それぞれにさまざまなパートナーを抱える日立製作所の強みが発揮できる領域だと考えている。
日立のIoTプラットフォーム「Lumada」の現在地
MONOist スマートマニュファクチャリングへの取り組みやバリューチェーン全体の変革に向けた取り組みなど具体的な動きが広がっていますが、2016年から取り組み始めた「Lumada」の現在をどう見ていますか。
阿部氏 ユースケースは既に500件前後、LumadaでIoT実践を通じたノウハウをテンプレート(サンプルとなる標準的な枠組み)化した「ソリューションコア」についても2018年度中には100件を超える見込みで、順調に共創や導入などが進んでいるという手応えだ。
2016年度はほとんどがPoC(概念実証)で「PoCの嵐」といった状況だったが、2017年度は実際に多くのビジネス導入が進み、案件としても数億円から数十億円のプロジェクトなども数多く出てきている。2017年度以降でフェーズは大きく変わったと感じている。
ただ、こうしたIoT基盤の活用や、第4次産業革命などの動きについては、まだ始まったばかりというのは事実だ。ビジネス面で大きく成長が期待されるのは2019〜2021年度の次の中期経営計画の期間になると考えている。2018年度は実績を積み上げつつ、この次の3カ年に向けた基盤作りを進める時期だと考えている。その意味では共創を広げ、ソリューションコアをより多く作り出していくことが重要だと考えている。
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