最長110mの距離で測定できる3Dスキャナー、航空機エンジンやタービン向けで提案:DMS2018
ルクセンブルクのArtec Europeは「第29回 設計・製造ソリューション展」(以下、DMS2018、2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)に出展し、110mの距離で測定可能なレーザー方式の3Dスキャナー新製品「Artec Ray」を紹介。日本での展開を強化する方針を示した。
ルクセンブルクのArtec Europe(ブランド名はArtec 3D)は「第29回 設計・製造ソリューション展」(以下、DMS2018、2018年6月20〜22日、東京ビッグサイト)に出展し、110mの距離で測定可能なレーザー方式の3Dスキャナー新製品「Artec Ray」を紹介。日本での展開を強化する方針を示した。
CADにそのままデータを取り込める運用性
Artec Europeは2007年からハンディタイプの3Dスキャナーを展開してきたベンチャー企業である。3Dスキャナーは数十年前から市場投入されているが、後発となるArtec Europeの強みとして、同社の最高業務開発責任者(CBDO)のアンドレイ・バクレンコ(Andrei Vakulenko)氏は以下のように述べる。
「データの精度の高さや、ハードウェアとしての携帯性や使いやすさに加えて、ソフトウェア面での強みが特徴だ。ユーザーインタフェースが優れている他、後工程なども考えて、SOLIDWORKSなどのCADソフトにそのままデータを取り込める機能も用意している。後発であることを逆に生かして、使用環境なども含めて総合的な運用性を高められているのが特徴だ」(バクレンコ氏)
同社はルクセンブルクに本社を置いているが、米国とロシアに開発拠点と製造拠点を設置。販売は現地パートナーとの契約で行い、現在110社のパートナーを通じて40カ国で製品展開を行っている。
3Dスキャナーの市場についてバクレンコ氏は「良くも悪くも2010年後前後からの数年間は3Dプリンタブームに振り回されてきた」と述べている。3Dプリンタは一部の主要特許の期限切れの影響から、低価格の製品が市場に大量に投入され、市場が活性化した。同時に3Dデータの作成を容易にする機器として3Dスキャナーにも注目が集まり、3Dスキャナー市場も同時に拡大した。
しかし、CADデータの作成が難しい点や造形後の後処理が面倒な問題など、数多くの課題が発覚し、ブーム的な動きは数年で終了。2015年以降は市場は停滞し、同時に3Dスキャナー市場も縮小したという。
ただ「一度は落ち込んだものの、2017年以降は再び着実に3Dプリンタと関係なく、成長をし始めている。活用できる用途が広がっている」とバクレンコ氏は手応えについて語っている。
用途については「リバースエンジニアリング用途が最も多いが、その他ではプロトタイプの製作用途や品質検査などの領域での活用も増えている」(バクレンコ氏)としている。業種については「あらゆる企業が想定できる。製造業が最も多いが、医療系やエンターテインメント系の用途なども増えている」とバクレンコ氏は述べている。
110mの距離でも測定できるレーザースキャナー
これらの流れの中で日本でもさらに導入を強化していく方針だ。その1つの切り口として提案するのが新製品である「Artec Ray」である。Artec Rayは最長で110m離れた場所から対象物を、サブミリ精度でスキャンできるレーザースキャナーである。同社の3Dスキャン用ソフトウェア「Artec Studio」で直接スキャンと処理が可能。さらに「Geomagic Design X」や「SOLIDWORKS」「ReCap」などのCADソフトにシームレスにエクスポート可能である。
用途としては大きさとしては建設、建築用途でも使用することは可能だが「影の部分が発生するために高精度でスキャンするためには複数回の測定が必要となる。その意味では建設や建築でのシビアな使い方ではなく、航空機や風力タービンなど大型機械などの設計や製造の領域での使用が最も強みを発揮できると考えている」とバクレンコ氏は新製品の用途について語っている。
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