工場向けIoTで独自ポジションを築く、「YE DIGITAL」の挑戦:製造マネジメントニュース
安川情報システムは2018年6月21日、経営方針説明会を開催。「IoTのその先へ」をキーワードとし、工場向けのIoT・AIの先進IT企業へと新たな立ち位置を確保していく方針を示した。
安川情報システムは2018年6月21日、経営方針説明会を開催。「IoTのその先へ」をキーワードとし、工場向けのIoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)の先進IT企業へと新たな立ち位置を確保していく方針を示した。
安川情報システムは安川電機の情報子会社として設立されたIT企業である。そのため、多くのITベンダーが業務システムを中心としたのに対し、基幹系業務システムなどエンタープライズITと、FAシステムなどの組み込み・制御領域での両方で40年の実績を持つのが特徴だ。この両面の強みを生かす分野として、同社が早期から取り組んできたのが工場向けのIoTソリューションである。
2003年には遠隔監視システムの受託開発を開始し、2006年には無線ルーターシリーズを発売。さらに2011年には製造現場の情報を簡単に収集するIoTゲートウェイ「MMLink」を、2014年にはこれらの収集したデータの基盤となるIoTプラットフォーム「MMCloud」を発売している。
中期計画でもIoTソリューション事業は重点事業と位置付けられているが、ここ3年でIoTソリューション関連では、10製品(サービス)をリリースしている。さらにIoTが広がれば必須となるセキュリティでも3製品(サービス)を投入するなど、積極的な強化を図っている。
安川情報システム 代表取締役 遠藤直人氏は「工場IoTへの取り組みの動きは進化や拡大を続けており、さらにソリューションを拡大していく。また、IoT領域は1社でカバーすることは不可能なので、パートナーシップにより先進技術を積極的に取り込んでいく。『IoTのその先へ』をテーマとし、データを取得後にどうやって活用して、価値を生み出していくかを提案していく」とIoTソリューション事業の方針について述べている。
2019年3月から社名を「YE DIGITAL」に
安川情報システムでは2019年3月から社名を変更し「YE DIGITAL(ワイ・イー・デジタル)」とする。新社名に込めた思いとして遠藤氏は「もともとは安川電機の電算処理をメインとしてきたが、新社名により『IoTやAIを提供するIT企業』としての立ち位置を示していきたい。その意味で社名には『情報システム』ではなく『デジタル』を採用した。そして将来的には世界に通用するグローバルIT企業を目指していく」と述べている。
ただ、IoTやAI領域は、さまざまなITベンダーが力を注ぐ領域であり、競争も非常に激しい。その中で安川情報システムがこれらの競合にも負けない強みとして挙げるのが「工場領域でのノウハウ」である。
安川情報システム 執行役員 マーケティング本部長の竹原正治氏は「もともとの成り立ちから製造業の現場のシステムインテグレーションを長年やってきた実績がある。製造現場や制御の最前線を深く理解できているITベンダーというのはあまりなく、この領域では大手ITベンダーとも対抗できるノウハウがあると考えている。この強みを生かす。製造業IoT、特にスマートファクトリーなど工場のIoT領域でまずは強いポジションを確立したい」と注力領域について述べている。
海外への取り組みでは、2018年6月に新たに米国シリコンバレーに子会社を設立。シリコンバレーの先端技術を製造業IoTでのソリューションに活用できる仕組み作りを進めるとしている。同拠点は主に技術の収集を主目的としているが、海外進出企業については「日本でのポジションを固め、日本企業の海外工場での支援をまずは行い、ノウハウを蓄積する。それらを足場としてアジアなどに展開し、その後グローバル化を進めていきたい」と竹原氏は展望を示していた。
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