「全体最適」と「外部連携」がテーマ、“日本版第4次産業革命”推進のRRI:RRI WG報告会2018(前編)(2/2 ページ)
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は2018年6月14日、都内で3つのワーキンググループ(WG)の活動報告会を開催。「全体最適」を実現するシステム思考の重要性や、海外との連携、工場外の最適化への取り組みなどを重点領域に挙げた。
スマートファクトリーにおける国際標準化
スマートファクトリー全体の標準化について、国際標準団体であるIEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)でも取り組みが開始されている。IECでは従来「SG8 インダストリー4.0/スマートマニュファクチャリング」などで話し合いが進められてきたが、2017年度には新たに、システム委員会にスマートマニュファクチャリングの標準化に向けたグループが設置される動きを察知し、準備を推進。2018年度の設置に対し、この国内審議団体の引き受けの手続きを開始した。さらに、国内委員会の準備委員会の設置と運営などを行った※)。
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海外との連携も強化。2017年11月に国際シンポジウムを開催した他、ドイツに続き新たにスマートファクトリー領域で米国、チェコ、フランスなどと連携を発表した。また、ハノーバーメッセに日本能率協会と共同でブース出展を行い、RRIおよび日本でのスマートファクトリーに関する活動などを紹介した※)。
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中堅中小製造業支援も拡大
中堅中小製造業の支援も拡大した。製造業がIoT化で価値を得るためには、サプライチェーンを構成する全ての企業がIoT対応を進める必要があるが、中小中堅製造業では大きな投資は難しく、ノウハウもない。これらを支援するために取り組みを進めているのが、中堅中小製造業AG(アクショングループ)である。
2016年度から廉価なツールを収集し公開する取り組みを実施しているが2017年度はその2回目を実施。ツールだけでなく、ツールを組み合わせて1つのソリューションとした「レシピ」を募集したことが特徴となる。これらの取り組みにより、新たに120件のツールとレシピを収集して公開した※)。
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その他、地域でIoT活用を支援する「スマートものづくり応援隊」などを実施しているが、地域ごとの支援体制をつなぎ、各地のノウハウを共有するために「スマートものづくり支援機関全国連絡会議」を2017年12月に開催し、約40の地方団体が参加したという。
その他、テーマ別サブWGによる産業機械分野でのデータの収集や可視化に対する検証などを行った他、2017年度に新たに設立した調査研究チームでは「System of Systems」や「アーキテクチャ」「産業セキュリティ」などの研究を行った。
2018年度は「工場外」をメイントピックに
2018年度の取り組みについては、日独連携を軸としつつ、国際標準化や産業セキュリティなどで協力を進めていく。また日本政府が産業のあるべき姿として訴える「Connected Industries」の実現に向けた取り組みを深掘りし、データの利活用が有効に行える環境作りを進める。
特に活動のポイントとしては、検討範囲をものづくりである生産から、エンジニアリング、サプライチェーンおよび経営全体へと拡大する。業種にフォーカスした検討も行い、それぞれの業種で最適なデータの利活用と、製造業の在り方を模索する。また、システム全体を俯瞰した検討を進めるため、ドイツの「RAMI4.0」をベースにした検討に加え、「システム思考」への取り組みを強化。新たに入門ガイドブックなども用意し、2018年6月に発行した。また5GやAIなど先進技術についても調査を進める方針である。
RRI WG1の共同主査である三菱電機の高橋俊哉氏は「活動には2つのポイントがある。1つは将来像の検討で、もう1つが現状の課題の解決である。システム思考での新たな製造業の在り方を模索するのは将来像の話となるが、産業セキュリティや中堅中小製造業対策などは現実的な課題の解決へのアプローチとなる。これらの両面での取り組みを推進する」と述べている。
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