モバイル化する医療機器、AIとロボットの活用も進む:MEDTEC Japan 2018レポート(3/3 ページ)
東京ビッグサイトで2018年4月18〜20日に開催された「MEDTEC Japan 2018」。今回は、医療機器のモバイル化やAI、ビッグデータなどの先進技術に関する同イベントでの展示内容を紹介する。
AIを使った疾病予測ソリューション
ビッグデータを活用したAI分析が医療分野にも進出している。MEDTEC Japan 2018でもAIを活用したソリューションが多く展示されていた。韓国企業のSELVASもその中の1社だ。
SELVASが展示した「Selvy Checkup」は、同社が保有しているSelvy Preditionプラットフォームを基盤として大規模医療機関との共同研究により開発された医療専用のAIソリューションだ。
BMIや腹囲、血圧、コレストロール、血液検査といった健診情報、既往歴や喫煙などの問診情報など24項目を画面入力すると、がんや糖尿病、認知症などの疾患にかかる確率を予測、数値化して表示する。
同社の説明員によると「予測のベースとなるのは150万人の10年間の健診結果で、その精度は90%以上を誇る。SELVASは、20年間ビッグデータを取り扱ってきた経験があり、ビッグデータのハンドリング技術には自信がある」という。
同社では、病院や検診センターに診断補助ツールとして、また保険会社ががん予防などの保険商品を開発することなどの利用用途を想定している。予測結果レポートは1500円から提供している。
介護現場をより明るくするコミュニケーションロボットも
超高齢社会に突入した日本では、介護スタッフの負担増大が大きな問題となっている。その解決策の1つとなりそうなのが、介護ロボットの活用だ。富士ソフトでは、高齢者福祉施設で利用できるコミュニケーションロボット「PALRO」を展示していた。
PARLOには、高齢者との日常会話やレクリエーション/健康体操を補助する機能が備わっている。100人以上の顔と名前を記録でき、名前を呼び掛けながら会話することができる。
また、名前や誕生日などを尋ねて、対象者に合わせた会話を展開する。例えば、「好きな食べ物はギョーザです」と回答した場合、「ギョーザと言えば宇都宮が有名ですが、行ったことはありますか」という受け答えをする。対象者に発話するせりふは、職員がカスタマイズできる。
レクリエーション機能としては、ダンスとゲーム、クイズ、落語などを組み合わせて2年分のレクリエーションを提供でき、高齢者の生活機能改善を支援する。インターネット接続できるので、遠隔アップデートが可能だ。
2012年から販売を開始し既に1000台ほど出荷している。富士ソフトの説明員は「医療機関の他にも、正確な説明が求められる金融機関でも利用可能だ」と説明する。購入の場合は67万円(税別)。レンタルサービスでは月額3万円(24カ月一括契約の場合)となっている。
医療機器は、部品や部材、ICT技術などさまざまな異業種企業の技術が集結して完成するもの。MEDTEC Japan 2018では、医療機器のモバイル化が進展するとともに、AIやIoT、ビッグデータといった新しい最先端の技術を積極的に活用する企業が目立った。
革新的な医療機器は、医療の質を向上させる。その活躍の場は、医療機関のみならず、家庭などのホームケアにおいても普及することは間違いない。今後の展開にも注目していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 医療機器のAI活用で期待される画像診断支援、国のゴーサインはいつ出るのか
パシフィコ横浜で2018年4月13〜15日に開催された「2018 国際医用画像総合展(ITEM2018)」。今回は、医療分野におけるAI(人工知能)技術に関する同イベントでの展示内容を中心に主要各社の取り組み状況を紹介する。 - 最新の医療機器を使った模擬手術室から新たな種は生まれるか
医療機器設計/製造の展示会「MEDTEC Japan 2017」で目玉展示の1つになったが、日本臨床工学技士会が協力した模擬手術室だ。 - 8K映像の内視鏡で遠隔医療、据え置き画質の超音波画像をモバイルで
ソシオネクストは、「MEDTEC Japan 2017」において、内視鏡手術などで用いられる高精細な8K映像をエンコード/デコードする技術を披露。モバイル医療機器ソリューション「viewphii(ビューフィー)」のアップデートも紹介した。 - PC作業中のバイタルモニタリングはマウスで、“低拘束”のセンサーで実現
アルプス電気は、「MEDTEC Japan 2016」において、脈拍に加えて、動脈と静脈のヘモグロビン度、酸素飽和度を同時に測定できる「ウェアラブル近赤外分光センサ」を展示。体の各所にセンサーを軽く当てるだけで計測できるという“抵拘束”も特徴の1つだ。 - 動いてる間でも正確に脈拍を測定、ルネサスがスマートアナログマイコンで実現
ルネサス エレクトロニクスは、「MEDTEC Japan 2016」において、高精度に脈拍を測定できるソリューションを展示した。 - 圧電センサーで加速度脈波波形をリアルタイム計測、血管年齢の測定が簡易に
太陽誘電は、医療機器設計/製造の展示会「MEDTEC Japan 2015」において、同社が開発したインテリジェント圧電圧力波センサー「AYA-P」を使った脈波計測への適用事例を紹介した。加速度脈波の波形をリアルタイム計測できるので、血管年齢の測定が容易になるという。