エンベデッドビジョンで工場外に進出、技術商社が描く産業用画像市場のフェーズ3:産業用画像技術
技術商社のリンクスは2018年6月6日、新たな事業戦略を発表。新たにプリント基板設計、製造企業のアイティエスエンジニアリングを買収し、エンベデッドビジョン事業を成長の柱とする方針を示した。
技術商社のリンクスは2018年6月6日、新たな事業戦略を発表。新たにプリント基板設計、製造企業のアイティエスエンジニアリングを買収し、エンベデッドビジョン事業を成長の柱とする方針を示した。
産業用画像市場はフェーズ3に
リンクスは、海外の優れた画像技術およびソフトウェアPLC技術などを日本に持ち込み、最適な形で実装を進める、主に「工場分野」を主戦場とする技術商社である。特にドイツのBasler(バスラー)のマシンビジョンシステムなどは国内の産業用市場でも高く評価され、大きな成長を遂げてきた。
リンクス 代表取締役の村上慶氏は「CPUの進化による情報処理能力の向上により1990年代後半から2次元の画像認識技術が大きく発展。工場内でも大きく活用が広がった。しかし導入が進んでから約20年が経過し、3次元化などは進んでいるものの、やりきった感じも出てきている」と現在の産業用画像市場について語る。
ただ、その中で「スマートフォンの発展などによるプロセッサや情報処理機能の多様化が進み、従来のようにインテルCPUのような大きな処理能力で、消費電力も大きなプロセッサを使わなくても画像処理が行えるようになってきた。組み込み型CPUでも画像処理が行えるようになり、エンベデッドビジョン市場が立ち上がろうとしている。産業用画像市場で、従来とは異なる新たな用途での使用が広がるフェーズ3が始まろうとしている」と村上氏は述べる。そこで、リンクスが新たな成長エンジンとしてエンベデッドビジョン事業を本格的に立ち上げることにしたという。
エンベデッドビジョンで広がる画像市場と「リンクスアーツ」を立ち上げ
エンベデッドビジョンへの期待について村上氏は「従来のマシンビジョンは、標準化されたコンポーネントやインタフェースにより確立した市場で、低リスクであるが、デメリットとしてPCなど部材費が高くなりがちで差別化も難しいということがあった。一方でエンベデッドビジョンは部材費が抑制でき省スペースで省電力である利点がある一方で、1つ1つの導入ケースで製品レベルからの開発が求められ、専門知識や専門技術が必要になるという障壁がある。この障壁を低減するのがリンクスの役割だ」と村上氏は述べる。
この取り組みの一環として、新たにプリント基板設計、製造を行うアイティエスエンジニアリングを買収し、100%子会社化した。さらに2018年6月25日に同社の社名を「リンクスアーツ」に変更する。
アイティエスエンジニアリングは従来、プリント基板の設計や製造、画像処理技術を中心とした各種装置の設計や製造を行ってきた。エンベデッドビジョンの展開でも主力となるのはバスラーの製品となるが、今回の買収を通じてリンクス内でエンベデッドビジョン製品の設計から製造までできるようになる。そのため、さまざまな形でユーザー企業や産業用画像機器メーカーに提案できるという。
村上氏は「従来リンクスは工場内の機器やソリューションの提案が中心だったが、エンベデッドビジョンにより工場外での画像市場にも進出する。顧客企業は産業用カメラ機器メーカーや産業用機器メーカーなどがある一方で、小売や不動産など異業種のユーザー企業との直接取引もあると考えている。その意味で、バスラー製品のサポートだけでなく、さまざまな形で製品を提供する可能性があり、リンクスアーツの設計や製造技術などを活用する」と述べている。
新市場については「当面は従来強いFA領域と近いところから攻めていく。市場構造が近い交通、メディカル、監視などの用途などが期待できる分野だ。10年後くらいには既存事業と同程度の規模にエンベデッドビジョン事業が拡大すると見ている」と村上氏は今後の取り組みについて語っている。
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