画像認識とソフトウェアPLCを軸に躍進するリンクス、ASEANに進出へ:製造業IoT
技術商社のリンクスは、シンガポールのウルトラビジョンを買収し、新たに日本国内だけではなく東南アジア市場に進出する。同社が強みを持つ画像認識およびソフトウェアPLCなどによりASEAN地域のスマートファクトリー化推進を支援する。
技術商社のリンクスは2017年7月5日、新たな事業戦略を発表。シンガポールのUltravision(ウルトラビジョン)を買収し、新たに日本国内だけではなく東南アジア市場に進出することを明らかにした。
日本でできないモノを日本に持ち込む戦略
リンクス代表取締役の村上慶氏は同社の戦略について「取り扱い製品の条件として、日本でできない世界をリードするハイテク製品を1社独占で代理店契約を結び、国内に展開することを条件として、取引先を選定している」と述べる。実際にリンクスでは、MVTec Softwareの画像処理ソフトウェア「HALCON」や、Baslerの工業用デジタルカメラなど、工業用画像処理分野で高いシェアを持つ最先端製品の国内展開を行っている。
ドイツのインダストリー4.0などにより産業用IoT(IIoT)やスマートファクトリー化に注目が集まっているが、リンクスでは産業用IoTの動きを4つの領域に分けて、取り組みを進めていく。
まず、画像処理ソフトウェア「HALCON」などを核に、リンクスがさまざまな工場への導入を進めてきた「画像関連技術」をコアコンピタンス領域と位置付け、継続的に強化を進めていく。さらに、今後大きく伸びるとされる「ソフトウェアPLC」をビルドアップ領域とした。まだ技術的にも完成されていないチャレンジング領域としては、クラウドPLCやSCADAを位置付ける。ここまでは将来的にはリンクスがカバーしていく領域とする。さらに上位のERPやMES、AIなどのIT企業がカバーしてきたような領域については「直接は取り組まずに協業によりカバーする方針だ」(村上氏)としている。
成長が期待されるソフトウェアPLC
これらの戦略のもと、今後の成長の大きなカギを握るのが「ソフトウェアPLC」である。リンクスでは、グローバルで大きなシェアを握るドイツの3S-Smart Software SolutionsのソフトウェアPLC「CODESYS」の国内展開を進めている。
スマートファクトリー化などの流れの中、工場内にもオープン化やネットワーク化が求められるようになってきている。国内の工場や製造装置ではハードウェアとしてのPLCを活用する場合が多いが、これらのオープン化などの流れの中、産業用PCを置きその上で各種機能をソフトウェアとして実行するような動きが広がりを見せてきた。その流れに乗りグローバルで大きく成長ししているソフトウェアPLCが「CODESYS」だ。
村上氏は「国内の製造現場は、メーカー固有のガラパゴス化した通信規格により最適システムの構築が困難になっている他、プログラミング言語の国際標準と離れてガラパゴス化していることで開発コストの増大につながっており、競争面で難しい状況がある。スマートファクトリー化を実現するためには接続が必要になり、そのためには標準への対応が必須である。『CODESYS』はソフトウェアPLCの領域では市場のトップリーダーであり、連携を実現する基盤に成り得る」と強みについて語っている。
日本からアジアへ、将来は工場外に飛び出す
産業用IoTへの取り組みを進める中で今後は新たなフィールドへの拡大を推進する方針だ。1つが日本国外への進出である。新たにシンガポールの技術商社であるウルトラビジョンを2017年3月に買収し、東南アジアでの取り組みを開始する。2017年9月からは社名もリンクスシンガポールに変更する。
ウルトラビジョンは、リンクスが日本国内で総代理店契約を締結しているMVTec Software、Silicon Software、LMI Technologiesなどの画像関連製品を東南アジアで展開しており、リンクスと共通製品を共同で展開できるという強みを持つ。村上氏は「日本企業の東南アジア工場などへの導入などを進めていく他、現地ローカル企業への導入も広げていく。今後は新たな技術を持ち込む場合も日本と東南アジア地域をセットで契約していく方針だ」と述べている。
さらに2020年には、工場外の世界への進出も狙うという。「産業用IoTにおいて、さまざまなオートメーション技術が、工場外でも利用されるようになる。物流や小売など、多くの領域でのチャンスが生まれると考えている。その動きに合わせて2020年には工場向け以外の製品群を展開していきたい」と村上氏は将来のビジョンについて語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3次元距離計測スキャナーの開発が容易に、リンクスがToF式CCDセンサーを発売
技術商社のリンクスは、ToF(Time of Flight)式CCDセンサーの開発製造を手掛けるスイスのEspros Photonics(エスプロス)と日本国内における総代理店契約を締結。2016年11月15日から国内販売を始める。市場の急拡大が見込まれる3次元距離計測スキャナーを容易に開発できるという。 - IEC 61131-3とPLCopenの目的とは
生産ラインに欠かせないPLC。そのPLCのアプリケーション開発効率化に役立つ国際規格「IEC 61131-3」およびそれを推進する「PLCopen」という組織をご存じでしょうか。本連載ではIEC 61131-3とPLCopenについて分かりやすく解説します。 - Motion Control FBの共通仕様と単軸の位置決め制御
PLCのモーション制御プログラム開発に貢献する「PLCopen Motion Control FB」。本連載ではMotion Control FBについてより深く掘り下げ、解説していく。第1回は共通仕様と単軸の位置決め制御について取り上げる。 - PLCが人質に取られて脅迫される時代へ、IoTがもたらす産業機器の危機
JPCERT コーディネーションセンターと経済産業省は「制御システムセキュリティカンファレンス」を開催。高度化が進む、制御システムへの攻撃の事例を紹介した。 - 製造現場における画像処理【前編】
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。 - スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。