日本の自動運転車で「世界最先端」を目指す経産省、産業の競争力向上に注力:人とくるまのテクノロジー展2018(2/2 ページ)
2018年5月23〜25日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2018」(パシフィコ横浜)の講演会に経済産業省 製造産業局 自動車課 ITS・自動走行推進室 係長の丸山晴生氏が登壇。「自動走行を巡る経済産業省の取組」をテーマに、経産省が行っている自動運転の「技術」と「事業化」の両面で世界最先端を目指すための施策を紹介した。
日本の自動運転のロードマップは
自動運転に関して、政府は国全体でのロードマップを策定。自動運転の将来像は自家用車と商用車に分けられ考えられており、商用車の方が早期に高いレベルの自動運転が実現すると見込まれる。商用車は2020年頃に一部地域におけるレベル4を実現し、順次対象を拡大する計画だ。
自家用車は高速道路においてレベル2の自動運転を2020年までに実現。レベル3の実用化に向けては、制度面の調査検討を進め、2020年をめどに市場化できるようにする。レベル4は2025年に実現するとしている。一般道路については2020年以降、主要国道などから順次導入し、2025年頃からさらに高いレベルの自動運転を一部で導入する。
自動運転に関わる制度整備大綱では「2020年度には自家用自動車における高速道路でレベル3相当の自動運転を実現する」という旗印を掲げた。この大綱の策定に基づいた主な取り組みの中では、交通ルールの在り方として国際的な議論において引き続き関係国と連携し、速やかに国内の法制度を整備するなどが挙げられる。これは、現行の制度では実現できないレベル3〜5の自動運転を実現するための取り組みなども含まれている。その他、万一の事故での被害者救済や、刑事責任の検討などもある。
また、2020年に限定地域における無人自動運転移動サービスのイメージとして現在、実証実験で活用可能な基準緩和認定制度を事業化の際にも活用可能にするなど、柔軟な措置を講ずることの検討などが取り組み事項に挙げられている。
こうしたロードマップの中で、国土交通省自動車局は車両基準領域を、同省道路局が道路領域を担当している。警察庁が道路交通法領域など法律上・運用上の課題を検討、通信領域は総務省が通信方式とその活用を担当する。それらの取りまとめは内閣府が行っている。
産業の競争力強化を推進
経産省の役割には、技術開発などによる自動車産業競争力強化の推進がある。「どんなに優秀な会社でも1社だけではうまくいかないこともある。そこを多数の会社が分野を決めて協力する体制ができれば、コストの低減や開発期間の短縮などもできる可能性がある。その呼びかけなどを経産省が行っている」(丸山氏)。産業界での主要9分野の協調戦略や産学連携の促進、国際的なルール作りに向けた体制整備、隊列走行の実証などに取り組む。
自動運転に関して経産省としては、産業政策の観点から世界最先端を目指している。技術については、企業が競争領域にリソースを集中投入できるよう、協調領域を最大化する。事業化については、実証を通じて、ビジネスモデルの明確化や技術の確立、制度やインフラを含めた社会システムの整備、社会受容性の確立を図る。
このうち、技術面の協調領域の最大化に向けて、協調領域の議論の前提となる「将来像の合意形成」と「協調領域の特定」については国交省と共催の「自動走行ビジネス検討会」で推進中だ。自動走行ビジネス検討会では、自家用車における自動運転(レベル2〜4)の将来像とともに、自動運転における競争・協調領域の戦略的切り分けを実施。また、基準や標準づくりへの戦略的取り組み、産学連携などについて検討している。
実証事業の推進については、無人運転車による移動サービスやトラックの隊列走行の事業化を目指した行動実証を進める。「こうした実証事業で制度整備につなげていき、それとともに先の技術を開発することで、日本全体の技術の底上げ、サプライヤーなどの技術開発につながることを目指す」(丸山氏)。
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