2018年度までに高精度3次元地図を整備、日本の高速道路全線で:自動運転技術
高精度3次元地図の企画会社であるダイナミックマップ基盤企画は、第三者割当増資を実施して事業体制を強化する。事業会社として再スタートを切り、日本国内の高精度3次元地図の整備を急ぐ。
日本国内の高速道路合計3万kmの高精度3次元地図が2018年度までに整備されることになった。
自動車メーカーと電機メーカー、地図測量会社などが共同出資で設立した企画会社「ダイナミックマップ基盤企画(DMP)」が事業会社として新たにスタートを切る。事業として高精度3次元地図の整備を進めるため、第三者割当増資を実施して事業体制を強化する。
業種を超えた共同出資
DMPは2016年6月、高精度3次元地図の整備や実証、運営に協調して取り組むことを検討するための企画会社だった。当初の資本金は3億円で、三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・P、トヨタマップマスター、いすゞ自動車、スズキ、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、スバル(当時は富士重工業)、ホンダ、マツダ、三菱自動車で、業種を超えた共同出資で設立した。
設立から1年となる2017年6月13日、DMPは東京都内で会見を開き、主要株主から37億円の出資を受けたことを発表した。社名は6月30日に「ダイナミックマップ基盤」に変更する。増資後の出資比率は、産業革新機構が33.5%、三菱電機が14%、ゼンリンとパスコが12%、アイサンテクノロジーが10%、インクリメント・Pとトヨタマップマスターが8%となる。
DMP 社長の中島務氏は「当初は企画会社としての準備期間が2年間だったが、需要に対応して迅速に整備するために事業化判断を前倒しした」と説明。DMPでは既に2016年12月に首都高速も含む高速道路500km分のサンプルデータを整備した。増資を受けて体制を強化することにより、2018年度までに日本国内の高速道路や自動車専用道路の全線を対象に高精度3次元地図を完成させる。
高精度3次元地図を整備するだけでなく、継続したメンテナンス手法の確立や、海外との連携も進める。既に、首都高速道路やヤマト運輸と協力し、高精度3次元地図の基となる点群情報の利活用を実践しているが、今後はドローンやIoT(モノのインターネット)技術を活用し、点群情報以外も基にしたメンテナンスの確立を目指す。
海外の地図データ大手であるHEREと連携に合意した。高精度3次元地図の整備やメンテナンスなど、手法を共通化できないか探っていく。「作り方や精度が異なる地図データを使った自動運転車が走って、問題が起きないかどうか。そこで、海外の地図データ大手との協力が必要になる」(中島氏)。HEREとの連携は、日独が第4次産業革命に向けて緊密な協力を進めることを発表した「ハノーバー宣言」の一環でもある。
静的情報である高精度3次元地図に、交通規制や道路工事など準静的情報、事故や渋滞など準動的情報、周辺車両・歩行者や信号など動的情報をひもづけたリアルタイムな地図はダイナミックマップと呼ばれる。自動運転車では、自車位置の精度向上や、システムの負荷低減で必要になる。自動運転技術以外にも、防災や社会インフラの維持管理などに応用していきたいとしている。また、高速道路だけでなく、一般道の高精度3次元地図の整備に向けても準備を進めていく考えだ。
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