デジタルツインをAIで強化、実機とソフトをMSCとHexagonがつなげる:CAEニュース
エムエスシーソフトウェア(MSC)は2018年5月30日、同社ユーザー向けイベント「MSC Software 2018 Users Conference」を開催した。同イベントではMSCのCEO、Paolo Guglielmini氏が登壇した。
エムエスシーソフトウェア(MSC)は2018年5月30日、同社ユーザー向けイベント「MSC Software 2018 Users Conference」を開催した。同イベントではMSCのCEO、Paolo Guglielmini(パオロ・グリエルミーニ)氏が登壇した。MSCは2017年2月2日、Hexagonによる買収に合意、同年4月に完了。以来、Hexagon傘下の企業となった。その後、Dominic Gallello(ドミニク・ガレロ)氏がCEOを退任し、2017年10月にはGuglielmini氏がその後を継いだ。Guglielmini氏はHexagonでMSC買収後の統合を指揮していた。
Hexagonは生産現場の測定機器やシステムなどを幅広く手掛けるスウェーデンの企業だ。「これまでR&Dに対して潤沢に投資してきた」とGuglielmini氏は述べる。
現在、MSCのシミュレーション技術と、Hexagonの測定とセンシングの技術と組み合わせた、デジタルツイン環境の構築を目指す。「現実世界と仮想世界、センサーとソフトウェアをいかにつなげるか。そのギャップを埋めるのが最終目標である」(Guglielmini氏)。この部分への積極投資は続き、Hexagonとしても引き続き関連企業の買収に取り組み、ポートフォリオ拡大を目指していく。その構想にはAIやディープラーニングといった技術も絡めて予測モデル構築の技術を確立し、解析・シミュレーションを強化するということだ。
「MaterialCenter」など複合材料解析関連のシステム開発についても引き続き意欲的に取り組んでいくが、ここもデジタルツインの仕組みと結びついていく。HexagonとMSCの技術で、3Dスキャニング測定のデータポイントを利用して、実測値を活用した複合材部品評価が可能な仕組みを開発する。
MSC製品では設計から生産、検査といったモノづくりにおけるプロセス一連を接続するため、「Simufact Additive」といった積層造形(3Dプリント)の解析機能を提供し、Hexagon側の技術であるCAD/CAMとの連携も実現。今後もその開発に注力する方針だ。
MSCの構造・流体解析の分野では、「Apex」(UI)、「Nastran」(構造)、「Marc」(機構)、「Cradle」(流体)、「Actran」(音響)の5つ柱を強化すべく投資する。過去製品で対応しきれていなかった問題に対して取り組み、使いやすさやアクセスしやすさを追求し、総合運用性をより高めていくということだ。
MSC傘下である国産CFDベンダーのソフトウェアクレイドルの流体解析ソフト「scFLOW」と、MSCの機構解析ソフト「Adams」の連携機能についても開発を進めている。自身も解析技術者でありMSC日本法人の代表取締役社長である加藤毅彦氏は「scFLOWは特に移動境界に強い」と、動作を伴う機構解析との連携のメリットについて述べた。
MSCが取り組む「Apex LEAF(Liquid Engineering Application Framework)」では同社製品におけるユーザーエクスペリエンス(UI関連)を大幅改善していくという。LEAFではMSCが長年育ててきたソルバー技術の維持と、既存データとの完全互換性を実現することを目指す。ここでの「Liquid」は「流体」や「液体」を示すのではなく、柔軟性や流動性の意味合いが強い言葉であるとのことだ。
LEAFに基づき、ActranやscFLOWなどと連携した構造音響流体連成解析機能も強化する。2018〜2019年にかけて少しずつ関連機能を実装していく予定だ。流体解析の結果をタイムステップごとで音響解析へ展開できる機能を開発しており、「解析結果と実測値が非常に合っている」と加藤氏は説明した。構造音響流体連成解析は、電装化が進む自動車開発における流体騒音解析などで取り組みが進んでいる。
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