第3の車載ソフトウェア「AUTOSAR Adaptive Platform」が本格起動へ:人とくるまのテクノロジー展2018(2/2 ページ)
制御系と情報系の2つに分かれていた車載ソフトウェアだが、自動運転技術の実用化に向けて、制御系の特徴であるリアルタイム性や信頼性を持ちつつ、情報系に近い情報処理能力も満たせるような、第3の車載ソフトウェアが求められるようになっている。この要求に応えようとしているのが「AUTOSAR Adaptive Platform」だ。
ベクターの「Adaptive MICORSAR」
AUTOSAR CPは、欧米の車載ソフトウェアベンダーの高いシェアを有している。AUTOSAR CPの有力ベンダーであるベクター・ジャパンは、AUTOSAR APに対応する「Adaptive MICORSAR」を展示した。
AUTOSAR APは2018年10月の量産適用向けの仕様をリリース前の段階であり、現時点ではオープンソースのレファレンスモデルが提供されている。同社はAUTOSAR APを先行的に評価したいユーザーに向けて「Evaluation Bundle」を提供するとともに、その内容を随時充実させている。「現時点でカバー率は70〜80%程度だ」(ベクター・ジャパンの説明員)だという。
なお、AUTOSAR APのOSはPOSIX準拠が求められており、LinuxやBlackBerryの「QNX」、Green Hills Softwareの「Integrity」、SYSGOの「PikeOS」などが候補に挙がっている。ベクター・ジャパンのドイツ本社であるVector Informatikは、2017年12月にSYSGOとジョイトンベンチャーを設立しており、Adaptive MICORSARにPikeOSを統合していく方針を示している。
イータスの「RTE-VRTE」
イータスは、同社のAUTOSAR APの導入に向けて開発中の「RTE-VRTEスターターキット」について紹介した。2018年6月末にリリースする計画となっている。
RTE-VRTEスターターキットに求められるAUTOSAR APのソフトウェアコンポーネントの開発は、同社の親会社である大手ティア1サプライヤーのボッシュ(Robert Bosch)と共同で進めている。「無線通信によるアップデートのためのOTA(Over-the-Air)や、セキュリティ、ビークルサービスなどを追加していくことになるだろう」(イータスの説明員)。
POSIX準拠のOSやハイパーバイザーは外部提供品を想定しているが、ハイパーバイザーについてはLynx Software Technologiesの「LynxSecure」を活用することになる見通し。
これらの他、AUTOSAR CPの有力ベンダーの1つであるメンター・グラフィックスもAUTOSAR APへの対応を進めているという。また、デンソーとイーソル、NEC通信システムが合弁で設立したオーバスも、POSIX準拠のOS「AUBIST Adaptive OS POSIX」を発表するなど対応を進めているところだ。
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