AIベース車載SoCの開発を促進する、ASIL D対応ビジョンプロセッサを発表:組み込み開発ニュース
シノプシスは、ASIL B〜D対応のビジョンプロセッサ「DesignWare EV6x Embedded Vision Processors with Safety Enhancement Package」、ソフトウェア開発キット「DesignWare ARC MetaWare EV Development Toolkit for Safety」を発表した。
シノプシス(Synopsys)は2018年5月17日、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転車用SoCの開発向けに、自動車向け機能安全規格ISO 26262の安全要求レベルであるASIL(automotive safety integrity level)のB〜Dまでに対応するビジョンプロセッサ「DesignWare EV6x Embedded Vision Processors with Safety Enhancement Package(EV6x Processors with SEP)」を発表した。また、ASIL D対応のソフトウェア開発キット「DesignWare ARC MetaWare EV Development Toolkit for Safety」を同年9月より提供する。
従来のEV6xプロセッサは、スカラー/ベクターDSP、及び畳み込みニューラルネットワーク(CNN)エンジンを搭載しているが、ASILには非対応だった。EV6x Processors with SEPは性能・消費電力・面積を維持したまま、ロックステップ機構、セーフティーモニター、エラーチェック、ウィンドウウォッチドッグタイマーなど、セーフティー機能を搭載したハードウェアを組み込み、ASILに対応。IEEE 754準拠ベクター浮動小数点ユニットおよび、セーフティーアイランドもオプションで組み込みが可能だ。
DesignWare ARC MetaWare EV Development Toolkit for Safetyは、EV6x Processors with SEP向けの開発環境を用意。C/C++、OpenCL C、OpenCV、OpenVX用のランタイムソフトウェアやライブラリの他に、CaffeやTensorFlowなどのフレームワークでトレーニングされたCNNグラフのマッピングツールも利用できる。既に、ASIL D非対応版「DesignWare ARC MetaWare EV Development Toolkit」は提供を開始している。
本プロセッサにより、AI(人工知能)機能を搭載した車載システムのISO 26262機能安全性認証、及びソフトウェア開発にかかる期間の短縮が期待できる。
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