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ISO26262の第2版の策定始まる、車載セキュリティが「ホット」な議題に日本自動車工業会 電子安全性分科会会長 インタビュー(1/3 ページ)

自動車向け機能安全規格であるISO 26262の第2版の策定が始まった。このISO 26262の国際標準化活動に10年近く携わってきたのが、日本自動車工業会で電子安全性分科会会長を務めるトヨタ自動車の川名茂之氏だ。川名氏に、初版の規格策定時の苦労や、国内自動車業界のISO 26262への対応状況、そして第2版の方向性などについて聞いた。

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 自動車向け機能安全規格であるISO 26262が正式発行された2011年11月から、3年以上が経過した。欧州が中心になって策定開始された規格だったこともあり、国内自動車業界の対応の遅れが心配されたが、大手自動車メーカーやメガサプライヤを中心にISO 26262に準拠する体制整備が進んだ。【訂正あり】

 実際に、高い安全要求レベルが求められる電動パワーステアリングなどでは、ISO 26262への準拠をうたう製品が国内サプライヤから続々と投入されている。中小サプライヤのISO 26262対応も着実に進みつつある。

 しかし国際標準規格であるISOは、その時々の状況に合わせて見直しを行うことになっている。ISO 26262もその例外ではなく、2015年初から第2版の策定に向けた活動が始まっている。

 ISO 26262の初版と第2版、これら両方の策定に携わっているのが、日本自動車工業会(JAMA) 安全・環境技術委員会 エレクトロニクス部会の電子安全性分科会会長であり、ISO 26262国際会議エキスパートでもあるトヨタ自動車の制御システム基盤開発部 制御プロセス改革推進室で技範を務める川名茂之氏だ。ISO 26262の策定に10年近く携わっている川名氏に、初版の規格策定時の苦労や、国内自動車業界の対応状況、そして第2版の方向性などについて聞いた。

【訂正】インタビューイーの申し入れにより公開時に掲載していた顔写真を削除しました。



MONOist 当初、国内自動車業界のISO 26262への取り組みは欧州より遅れていたそうですが、これはなぜでしょうか。

川名氏 2005年にドイツが中心となってISOに提案がなされましたが、このときは既に国際標準としての下準備ができており、当然ながら作成した欧州(ドイツとフランスが中核)では、その案の持つ背景、提携内容、実現性についての検討がなされていました。

 日本は第2回国際会議から正式に参加しており、当時のPart1〜9まで英文で書かれた標準案を理解することを優先せざるを得ず、その結果、運用まで考えての対応で出遅れ感が出たことは否めません。

MONOist ISO 26262の規格策定の当初、米国の対応はどうでしたか。

川名氏 下準備のできている欧州が先行する一方で、日本以上に米国は出遅れていたと記憶しています。

MONOist 当初はISO 26262への対応で出遅れもあった国内自動車業界ですが、現在ではほぼキャッチアップできていると聞いています。それはなぜ実現できたのでしょうか。

川名氏 国内では、日本自動車技術会が規格の審議を、JAMAと日本自動車研究所(JARI)が連携して運用に関する課題対応を担当しました。また、車載ソフトウェアの標準化団体であるJasParが実証実験を行いました。さまざまなスキルを持ったエンジニアが並行して活動を加速したことで、ISO 26262に対応するための体制整備が進んだと認識しています。これらの活動は、自動車メーカーだけでなく、大手から中小までのサプライヤが参加していたことも大きく影響していたと思います。

 国内の自動車業界は、規格が制定され運用が開始されると、試験データの解析例を活用するといった実際の応用に強いことも、キャッチアップできた背景の1つになっているのではないでしょうか。

MONOist 2011年11月にISO 26262の規格が正式発行された際に、国内の自動車業界では2014年が規格対応する時期の目安になったという話を聞きました。なぜ2014年末になったのでしょうか。

川名氏 国内の自動車メーカー以上に、ISO 26262への対応に熱心だったのが欧州の自動車メーカーを顧客に持つサプライヤです。2011年11月に規格が発行された以上、そのタイミングから開発が始まる車載システムがISO 26262に準拠していないと、欧州の自動車メーカーに採用してもらえなくなる可能性があります。その、ISO 26262に準拠しなければならないであろう車載システムの量産時期は、早ければ2014年になります。

 このことから2014年が、ISO 26262に対応する目安として、国内自動車業界のコンセンサスになったわけです。

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