ISO26262の第2版の策定始まる、車載セキュリティが「ホット」な議題に:日本自動車工業会 電子安全性分科会会長 インタビュー(2/3 ページ)
自動車向け機能安全規格であるISO 26262の第2版の策定が始まった。このISO 26262の国際標準化活動に10年近く携わってきたのが、日本自動車工業会で電子安全性分科会会長を務めるトヨタ自動車の川名茂之氏だ。川名氏に、初版の規格策定時の苦労や、国内自動車業界のISO 26262への対応状況、そして第2版の方向性などについて聞いた。
国際標準化活動で必要なのは技術力が7割、英語力が3割
MONOist ただ、国内の中小サプライヤまでISO 26262対応が浸透し切ってはいないとも思います。これについてはどのように対策すべきでしょうか。
川名氏 ISO 26262は車載電子システムの機能的な安全性を証明するための国際標準であり、主な安全設計は自動車メーカーやティア1サプライヤのシステム開発の段階で決定/実行されます。
安全設計がなされた結果、中小のサプライヤの工程では信頼性を上げる従来通りの開発手法で実施することに変わりなく見えるために、浸透し切れていないように思われるのではないでしょうか。
例えば、ティア3やティア4のサプライヤは、従来通りしっかりと開発をしていただくことが重要だと思います。
MONOist 日本の産業界は欧州と比べて国際標準化活動が苦手と言われています。ISO 26262についてはどうだったのでしょうか。
川名氏 欧州では国をまたいで部品調達する際に、自社標準ではなく国際標準がないと、独自仕様になり、納期やコストの面では効率が悪くなります。このため、標準化が必須になります。しかし、日本の産業界の場合は、標準化する前にモノづくりを優先して技術的に先行し、デファクトスタンダードを狙う傾向にあります。
もともと日本の産業界が国際標準化活動が苦手な理由は、多くの人が参加する国際会議の場で、英語で論戦を繰り広げることが困難だからではないでしょうか。各国から集まる膨大な量の英語によるコメントを、日本語に直して理解/判断し、また英語に直して回答するという作業には時間がかかります。このため、どうしても対応が後手に回る可能性が大きいのです。
ISO 26262の場合は、上述のように幾つかの団体が検討を開始し、具体的な運用に関して各国と技術的な議論を行うなど、標準化そのものの素案策定はともかく、実運用で後れを取らないなどの努力の結果、最近では日本の提案に対する期待が高まってきているように感じます。
MONOist 10年近く携わってきたわけですが、国際標準化活動で重要なこととは何でしょうか。やはり英語力ですか。
川名氏 日本人が英語を母国語する相手と議論をするのは大変です。話している内容は理解できるのですが、英語で相手を納得させるような話をするのが難しいですね。また、日本では大人数が参加する会議になると意見を言わないで後で個別に説明したいとする人が多いですが、海外では通用しません。
私が重要だと考えているのはしっかりと準備することです。話すことをあらかじめ用意していれば、きちんと相手に伝わります。そういう意味では、国際標準化活動で必要なのは、技術力が7割、英語力が3割です。後は、会議におけるキーマンを探し当てて、日本の提案を反映してもらえるように説明することも重要です。
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