医療機器のAI活用で期待される画像診断支援、国のゴーサインはいつ出るのか:2018国際医用画像総合展レポート(3/3 ページ)
パシフィコ横浜で2018年4月13〜15日に開催された「2018 国際医用画像総合展(ITEM2018)」。今回は、医療分野におけるAI(人工知能)技術に関する同イベントでの展示内容を中心に主要各社の取り組み状況を紹介する。
島津製作所の第8世代DR搭載回診用X線撮影装置
島津製作所は「With Your Stories --lifetime healthcare support--」をテーマとして、予防から診断、治療、予後に至るまで人生の全てのステージを支える製品群を展示していた。新製品として2018年4月に販売開始したDR搭載回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version」などを紹介していた。
MobileDaRt Evolution MX8 Versionは、撮影業務を行う診療放射線技師の作業負荷を抑えることをコンセプトに開発した装置だ。全世界3500台以上の実績を持つMobileDaRtの第8世代機となる。
支柱を収縮することで、走行時には1.27mの高さにして前方の視野を広く確保した。本体重量は500kgで、電動アシストによって快適かつ小回りの効く運用が図れるようにした。また、フルフラットの19型大型タッチパネルモニターを採用し、撮影した画像は約2秒で確認できるという。
島津製作所では、富士通、富士通研究所との共同研究を通じて、AIを活用した画像診断支援技術の製品化を進めている。具体的には、島津製作所製の質量分析計で得られる測定結果の解析過程で不可欠な大量のデータ処理にAIを活用する技術を開発している。質量分析計で得られたデータ(グラフ)から波形(ピーク)の幅や高さを読み取る工程の自動化を目指し、2019年3月までの製品化を予定している。
画像処理エンジン「REALISM tune」をアピールするコニカミノルタ
コニカミノルタジャパンは「人に臨む,未来に挑む。IMAGING at the front, INNOVATION for the future.」をテーマに掲げ、X線撮影装置や超音波診断装置、ヘルスケアIT、医療安全などのソリューションを紹介した。
DR(X線)コーナーでは、ワイヤレスDRの第3世代となる「AeroDR fine」を展示。このAeroDRシリーズの性能を引き出す画像処理エンジンとして新たに搭載された「REALISM tune」が紹介されていた。
REALISM tuneは、被写体内のヒストグラム解析によりダイナミックレンジ圧縮の処理強度を自動で最適化する技術。被写体厚によらず全関心領域を視認可能にし、撮影後の調整作業負担を軽減する。被検者の体格に応じて最適な画像となるようなチューニングが自動的に実行できる。
日立製作所は「DI×AI」で画像診断の質と効率の向上を支援
日立製作所は「Creating new value through innovation and digital technologies」を展示テーマに各種モダリティに加えて、AIや手術支援ソリューションなどを展示していた。
同社もまた他のベンダーと同様、画像診断の質と効率の向上を支援する取り組み「DI×AI(Diagnostic Imaging with Artificial Intelligence)」を進めている。展示では「Hybrid learning」という名称で紹介されていた。
Hybrid learningとは、医師の知見に基づいて病変の特徴量を抽出する「ルールベース手法」とディープラーニングを融合させ点が特徴。「比較的少ない画像データ数でも高い病変検出精度が期待できる。現在は肺がんや脳疾患などにおけるアプリケーションを開発中であり、今後は乳がんや認知症なども対象に進めていく」(日立製作所の説明員)。
医療分野におけるAI活用としては、特に画像診断支援が期待されるところだ。膨大なデータを学習して適切な診断を下すことを支援するAIの能力は、今後さらに進化を遂げることが予想される。これまで経験則や勘などで行われていた検査・診断も、より効率的かつ正確になることは間違いないだろう。
しかし、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」などの法整備が整っておらず、主導する立場を取る厚生労働省も積極的な姿勢を取っているとはいえないのが現状だ。
同分野における製品化のスケジュールについては「国からのゴーサインが出れば、なるべく早くリリースしたい。そのタイミングを見つつ、インフラを整えているところだ」という声が今回取材した企業担当者から多く上がっていた。技術の動向とともに、適用に向けた展開にも今後注目したい。
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