医療画像解析のAI活用は黎明期、今後は市場成長が急加速――エヌビディアのヘルスケア事業:人工知能ニュース
エヌビディア本社よりヘルスケア事業バイスプレジデントのキンバリー・パウエル氏が来日し、同社が開発した医用画像診断のためのコンピューティングプラットフォームである「Project Clara」(Clara)について説明した。Claraは仮想GPU環境であり、「NVIDIA vGPU」の活用によるマルチユーザーアクセスが可能である。
NVIDIA(エヌビディア)は2018年5月9日、同社のヘルスケア分野におけるAIコンピューティングの取り組みに関する記者発表会を開催した。
エヌビディア本社よりヘルスケア事業バイスプレジデントのキンバリー・パウエル氏が来日し、同社が開発した医用画像診断のためのコンピューティングプラットフォームである「Project Clara」(Clara)について説明した。Claraは2018年3月に米国で開催された「GPUテクノロジーカンファレンス(GTC)」で発表され、日本における公の場での発表は初めてとなった。Claraは仮想GPU環境であり、「NVIDIA vGPU」の活用によるマルチユーザーアクセスが可能である。
エヌビディアは2007年にGPUコンピューティング用の統合開発環境「CUDA」をリリースしているが、ヘルスケア分野の中でも特に医療画像分析に着目し、技術開発や事業に取り組んできた。医用画像診分析や装置は病気の早期発見および病状改善などに有効である。それがひいては健康寿命を延ばしていくことにもつながる。一方、画像分析はデータ処理が膨大になりがちである。さらに、人体の構造は極めて複雑であり、画像処理の速度や精度(画質)といった技術的な課題を常に抱えてきた。膨大な演算処理能力が必要とされるこの分野で、GPUの特性が発揮できることからエヌビディアが貢献できると考え、取り組んできたという。
また「全世界の医療機関には約300万台の画像診断装置があるが、買い替えるスパンは数十年と長い傾向」とパウエル氏は説明する。償却期間が長くなりがちな医療機器システムにも対応できる仕組みとして、エヌビディアが開発する拡張性に優れたアクセスする場所を選ばないプラットフォームが有効であると考えているとのことだ。
医療画像分析においては、AI(人工知能)やディープラーニングの活用に注目が集まっているが、「活用段階としては現在はまだ黎明期だが、既に現状の医療画像系の研究論文の半数がAI関連である」とパウエル氏は述べ、今後は市場も急速に伸びて活性すると見ているという。
エヌビディアではヘルスケア分野の開発パートナーシッププログラムも実施している。そこにはスタートアップ起業や日本企業も含まれる。2016年12月に東芝からキヤノン傘下へと移ったキヤノンメディカルシステムズも、エヌビディアの開発パートナーである。同社とエヌビディアは2018年4月に、医療現場におけるディープラーニング研究インフラの開発および販売に関する業務提携を結んでいる。キヤノンメディカルシステムズは2018年1月からデータセンター向けGPU「NVIDIA Volta」搭載の個人向けスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Station」を利用し、医療情報統合管理システム「Abierto VNA」を提供する。両社の協業により、ディープラーニングを用いた早期発見や診療支援への取り組みを加速させたいということだ。
「日本のパートナー企業と協力しながら、日本市場のニーズの聞き取りや、政府関連や医療機器における規格制定への啓蒙活動も関連機関に実施していく」(パウエル氏)という。
「現状では人がやらなければならないステップの一部にAIなどによる自動化に技術を適用する。それでできた時間を患者に向き合うために使うことが可能になる。MRやCTの活用においてはコンピュータが必須であり、最新のITを早期に採用する傾向がある。放射線科医は、新たな技術を医療の現場に導入するということの先駆者のような立場であると考える。よって医療画像から取り組みを始めていけば、そこで得られたメリットを見た他の分野の医療現場の人もメリットを見いだして、技術の採用を広めてくれると考える」(パウエル氏)
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