IoT向け仮想通貨技術「IOTA」、富士通がサプライチェーン管理に活用:ハノーバーメッセ2018
富士通はハノーバーメッセ2018に出展。インテリジェントダッシュボードやビジュアルラインなど工場向けのソリューションを紹介した他、新たにIoT向けの仮想通貨技術「IOTA」を活用したサプライチェーン管理システムのデモを披露し、大きな注目を集めた。
富士通はハノーバーメッセ2018(2018年4月23〜27日、ドイツ・ハノーバーメッセ)に出展。インテリジェントダッシュボードやビジュアルラインなど工場向けのソリューションを紹介した他、新たにIoT向けの仮想通貨技術「IOTA(アイオータ)」を活用したサプライチェーン管理システムのデモを披露し、大きな注目を集めた。
ブロックチェーンの利便性をさらに高めた「IOTA」
注目を集めたのが仮想通貨技術「IOTA」の製造業のオペレーションへの応用である。「IOTA」は2016年7月にリリースされた新たな仮想通貨技術で、IoT向けに特化した特徴を持つ。基幹技術となるのが「Tangle」と呼ばれる技術だ。ビットコインを実現したブロックチェーン技術のような位置付けだが、ブロックチェーンのように「ブロック」や「チェーン」は持たない。DAG(Directed Acyclic Graph、有向非循環グラフ)に基づく分散型台帳アーキテクチャを活用し、糸のようなつながりでデータを表現している。
「IOTA」の基幹技術である「Tangle」のイメージ。トランザクションごとに各種デバイスが方向性を持つ線で結ばれ、その中で新たなトランザクションが発生すると過去のトランザクションを参照していく仕組みとなっていることからセキュリティを確保する(クリックで拡大)
製造業での活用も想定される「IOTA」だが利点としては4つの点があるという。
富士通 インダストリー4.0 コンピテンスセンター代表のアンドレアス・ローンフェルダー(Andreas Rohnfelder)氏は「ブロックチェーン技術は分散型台帳システムとして優れたシステムだが、データ転送に手数料が発生する他、スケーラビリティなどにも課題を抱える。IOTAはIoTデバイス向けの分散型台帳システムであるため、情報伝送コストが不要である他、スケーラビリティなどで利点を持つ。さらに軽量で安全なデータ伝送が可能であり、製造業でもさまざまな応用が可能だ」と述べている。
IOTAはドイツを拠点とする「IOTA Foundation」により運営されているが、富士通ではいち早くこの技術に目を付け、IOTA Foundationとの協力を推進。IoTでのデータ流通でIOTAを活用する取り組みを進めている。
その1つとして製造業のサプライチェーン管理で「IOTA」を活用するデモをハノーバーメッセ2018で披露した。
同デモは2台のロボットと2台のカメラで正しい部品を認識するとともに、ルートが正しいかどうかを判断しているというもの。この認証データを、サーバで一括で情報収集する中央集中システムではなく、IOTAを使った分散型台帳システムで実行しているというものだ。
同デモでは工場内のピック&プレースのように見えるが、イメージしているのは複数工場のトレーサビリティーをイメージしたサプライチェーン管理だ。ローンフェルダー氏は「工場内の情報管理だけを考えれば中央集中システムの方が効率は良いだろう。ただ複数工場などを連携させ、データのやりとりを行う場合、セキュリティやシステム効率の面で分散型システムの利点が発揮される」と価値について強調する。
既にドイツ内ではIOTA Foundationの協力企業によるIOTAを活用したセンサーデータのマーケットプレースの実証なども進んでいるとし「富士通としても新たなシナリオを訴え、実証を進めていきたい」とローンフェルダー氏は語っている。
IOTAの活用については現在、IOTA Foundationの拠点がドイツにあることから富士通のドイツ拠点で実証を進めているが、富士通 オファリング推進本部 AI&IoTオファリング統括部 オファリング企画部部長の及川洋光氏は「グローバルおよび日本でも活用できる状況も多く、今後ソリューションにどう組み込むか検討していく」と述べている。
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