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新たな機能性人工皮膚が医療機器として製造承認:医療技術ニュース
京都大学は、開発・改良を重ねてきた機能性人工皮膚が、医療機器として製造承認されたと発表した。細胞を加えた人工皮膚と同等の治療効果を有し、皮膚再生治療が必要な患者に対して適切なタイミングで用いることができる。
京都大学は2018年4月17日、開発・改良を重ねてきた機能性人工皮膚が、医療機器として製造承認されたと発表した。この成果は、同大学大学院医学研究科形成外科 名誉教授の鈴木茂彦氏らの研究グループによるものだ。
研究グループは、従来の人工皮膚を改良して、難治性かいよう治療薬として用いられる塩基性線維芽細胞増殖因子を吸着し、1週間以上かけて放出する機能性人工皮膚を開発。この人工皮膚に塩基性線維芽細胞増殖因子を含ませると、従来の人工皮膚と比較して2分の1〜3分の1の期間で疑似真皮が形成された。治療効果についても、細胞を加えた人工皮膚と同等であることを確認した。
また、医療機器として承認を得るため、2010〜2011年にかけて同大学病院の医師主導による治験を実施。その後、人工皮膚の製造を担当したグンゼが承認申請をして、医薬品医療機器総合機構の承認を得た。
開発した機能性人工皮膚は、保険治療での使用が可能になるため、細胞を含む海外製品と比較してコストを10分の1に抑えられる。細胞製品のように、輸送や保管時に厳しい温度管理を必要としたり、有効期限が短いという問題もないため、皮膚再生治療が必要な患者に対し、適切なタイミングで利用できる。塩基性線維芽細胞増殖因子以外の成長因子も吸着できることから、皮膚再生分野以外への応用が期待される。
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