インダストリー4.0は実装段階と訴えるシーメンス、マインドスフィアも新フェーズ:ハノーバーメッセ2018(2/2 ページ)
シーメンスはハノーバーメッセ2018において、プレスカンファレンスを開催し、インダストリー4.0が既に実装段階に入っており、成果を残していることを強調。合わせて、同社の推進する産業用IoT基盤「マインドスフィア」の進捗状況と、TSNなど新たな技術への取り組み状況を紹介した。
マインドスフィアは第2フェーズに
こうしたさまざまなソリューションに加えて、同社がクラウド型産業用IoT基盤ソフトとして展開する「MindSphere(マインドスフィア)」についても、順調に導入が広がりを見せていることを訴えた。
マインドスフィアは、もともとはSAPのIaaS(Infrastructure as a Service)環境をベースとして開発されたPaaS(Platform as a Service)サービスだったが、2017年にIaaSとしてAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、アトス(AtoS)などにも対応可能とすることが発表され、実際にAWS対応の「MindSphereバージョン3」などがリリースされている。今回は新たに、Microsoft Azureについてはクラウドだけでなくオンプレミスでも対応可能とするという。これにより、データについては工場内から出したくはないがマインドスフィア上で稼働するアプリケーションを使いたいという場合でも対応可能となるという。オンプレミスでの対応についてはまずはドイツから開始し、日本での導入は2019年初めになる見込みだという。
さらにマインドスフィアの活用のベストプラクティスを共有するユーザーコミュニティー「マインドスフィアワールド」を新たに立ち上げたことを発表。開始時はドイツで19社が参加。今後、米国、イタリア、韓国、日本で、それぞれの国ごとの「マインドスフィアワールド」を立ち上げるという。マインドスフィアを活用してビジネスを展開するパートナー会であるマインドスフィアパートナープログラムとは別組織として平行して展開する計画である。
マインドスフィア上で稼働するアプリケーションの充実などにも取り組む。マインドスフィア上でモーターなどのドライブ情報を収集し見える化や評価などを行う「SIDRIVE IQ」などを展開する他、全世界の工場の生産能力の最適化を実施できるアプリなどを展開する。
AIコントローラーやTSN対応なども
新たな技術強化の1つとしてエッジコンピューティングの強化にも取り組む。エッジでの情報処理やアプリケーションの活用などを実現。AI機能などの活用も推進する。さらに積層造形技術などにも積極的に取り組み、新たに「Additive Manufacturing Experience Center」をドイツ・バイエルン州のエアランゲンに設立することを発表した。
また、新たな技術への対応として「TSN(Time-Sensitive Networking)」への対応を強化。インダストリー4.0の推奨通信規格とされている「OPC UA」が「TSN」対応を進めていることも踏まえ、いち早く関連製品の開発を進めており、製品として用意する姿勢を示した。
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