医療分野のAIは自動診断だけじゃない、シーメンスヘルスケアが製品に順次搭載:人工知能ニュース(2/2 ページ)
シーメンスヘルスケアが東京都内で会見を開き国内の事業戦略を発表。「医療デジタル化の推進」で重要な役割を果たすAIの採用について説明した。AIによる自動診断が注目を集めているが、既に解析を助ける機能として順次製品に搭載し始めているという。
AI技術と医療分野の関わりを4つの段階に分けて検討
AIの活用という意味で、自動運転技術とならび注目を集めているのが医療分野だ。CTやMRIなどの診断画像から、熟練の医師でも分からない病変をAIが見つけ出す事例などが多数報告されている。
ただし、話題になっているこれらのAI診断は、薬機法などで制限されており医療機関では実施できないのが実情だ。「AIによる自動診断は臨床研究として米国を中心に進んでいる。これらはディープラーニング(深層学習)を用いているが、日本人のデータを使って学習しなければ日本人の診断には使えない。これらについては政府などと調整を取りながら、ワーキンググループを作るなどして着実に取り組みを進めている」(森氏)という。
シーメンスヘルスケアは、AI技術と医療分野の関わりについて4つの段階に分けて検討している。第1段階は装置の性能向上で、操作手順の自動化や装置内での処理の最適化などに用いることになる。第2段階は診断画像の解析であり、AIが診断までを行うのではなく、画像読影を支援したるする機能だ。第3段階では、患者個人のさまざまなデータをデジタル化して“デジタルツイン”を作成する。そして第4段階は、患者の集団を対象にしたヘルスケアの実践になる。
森氏は「シーメンスヘルスケアは医療機器メーカーというイメージが強いかもしれないが、ドイツのインダストリー4.0をけん引するシーメンスの中で医療のデジタル化を推進してきた。医療分野のAIについても長い経験と実績がある」と強調する。
その実用化事例になるのがAIベースの画像解析技術「AutoLabeling」だ。例えば、CTやMRIの画像で見える頸椎の椎体のそれぞれに、何番目の椎体であるかを自動でラベリングしてくれる。アキシャル、サジタル、コロナルなどどの画像でもラベリングされるので、常にどの椎体を見ているかが把握できる。
また、CT装置のオプションである「FAST 3D Camera」は、AIを搭載することにより患者の寝ている向きや体型、大きさや厚さなどを自動で認識できる。これにより、CTによる被ばく量を抑えながら、最高品質のCT画像を撮影できるようになるという
「医療分野におけるAIは自動診断だけではない。これらの解析を助ける機能をブラッシュアップして、順次製品に組み込んでいくことになるだろう」(森氏)としている。
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