モビリティのサービス化の最前線、技術とビジネスの在り方が変わる:MONOist Future Mobility Forum 2018 レポート(3/3 ページ)
MONOist編集部が開催したセミナー「MONOist Future Mobility Forum 2018」では、つながるクルマの進化を支える最新技術について語られた。各社の講演レポートをお届けする。
セキュリティは専門チームで、全体を俯瞰することが重要
ユビキタス 社長の佐野勝大氏は、MaaSを実現するための必須となるサイバーセキュリティの最新動向や、今後の自動車開発におけるセキュリティの組み込み方などを紹介した。
佐野氏は「クルマは移動手段だけでなく、車輪を持ったモバイルデバイスになりつつある。これまでクルマのネットワークは閉じられた環境にあったが、ネットワークサービスの汎用的な通信プロトコルとつながることで、無縁だった攻撃のターゲットとなった」と指摘。その上で、自動車のセキュリティ対応の難しさは、「機能安全(セーフティ)とセキュリティの性能がトレードオフの関係にあり、走行性能まで含めると三つどもえの開発になる点だ」(佐野氏)という。また、MaaSはいつ誰がどこで乗っているかが分かるため、プライバシーデザインの観点も要求されるとした。
佐野氏は自動車を使うユーザーのリテラシーも不可欠だと説明する。「PCを使う時にはIDやパスワードが抜かれるかもしれないという意識がある。しかし、クルマに乗る時はそんなことは考えない。今後は、クルマを使う時のセキュリティの意識を醸成していくことも必要になりそうだ」(佐野氏)。
車載セキュリティの開発に当たって、ソフトウェアの品質向上と、専門チームの設置が重要であるという。セキュリティ対策で自動車の開発現場の負担は増加するものの「ソフトウェアの品質が上がれば脆弱性は減らすことができる。これは、今の開発工程でも始められることではないか」(佐野氏)。また、セキュリティは専門家に従えば実装できるものではないことも強調した。「サイバーセキュリティはレイヤーによって防御の仕方や攻撃が異なるため、全て網羅できるベンダーはいない。複数のベンダーを引き入れて社内の人員も含めて組織化し、専門のチームがセキュリティシステムの全体を俯瞰しながら管理するのが理想的だ。自動車メーカーだけでできることでもない。行政や業界団体、自動車メーカーからサプライヤー、ディーラー、修理工場、流通事業者、サービス事業者まで一気通貫で意識を持ちたい」(佐野氏)としている。
街全体のデジタル化へ、モデルベース開発が果たす役割
ダッソー・システムズ CATIAシステムズ・センター・オブ・エクセレンスシニア・テクニカル・マネージャの兼平靖夫氏は、現在の車載システムを取り巻く環境と、同社の3Dモノづくりプラットフォーム「3DEXPERIENCEプラットフォーム」により、複雑な開発にいかにシームレスに対処できるかを紹介した。
自動車などの製品開発において「以前は機能開発だけをやっていればよかったが、2011年ごろから機能安全が課題となり、昨今ではさらにセキュリティも考えなくてはならなくなってきた。こうした異なるドメインが協調した同時開発を行う必要がある」(兼平氏)という。
このうち機能設計に関しては、コストやスケジュール、リスクを調整しながら複雑なシステムを作り上げるMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)やMBD(モデルベース開発)が有効だ。
また、MaaSは街全体のデジタル化を考える必要があり、非常に難しくなっている。機能、セーフティ、セキュリティといったドメインを並行して進めなければならない。ここで、さまざまな側面からモノをバーチャルに見ることができるモデルが役立つ。モデルは機能とコンポーネントを全て管理する。複雑な機能もMBSEを活用すれば把握することが可能だ。さまざまな動くモデルを作って組み合わせて実行することにより、バーチャルな検証が行える。
3DEXPERIENCEプラットフォームを用いることで、マーケティングから販売、エンジニアリングに至るまで、会社のあらゆる組織にソフトウェアソリューションを提供し、価値創造プロセスで消費者のエクスペリエンスを差別化することができるという。ダッソー・システムズは3DEXPERIENCEプラットフォームにより、柔軟でシームレスなMBSE/MBD開発ソリューションを提供する。
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