工場内のIoTセンサーを複数同時にワイヤレス給電、東芝がマイクロ波技術を応用:スマートファクトリー
東芝は、工場やプラントの稼働状況などを検知するIoTセンサーへのワイヤレス給電を一括して行える「マイクロ波遠隔給電技術」を開発した。複数のIoTセンサーと給電装置の間のマイクロ波伝搬状態に基づいて最適に給電ビームを制御することにより、複数のIoTセンサーに対して同時かつ高効率に給電することに成功したという。
東芝は2018年3月28日、工場やプラントの稼働状況などを検知するIoT(モノのインターネット)センサーへのワイヤレス給電を一括して行える「マイクロ波遠隔給電技術」を開発したと発表した。複数のIoTセンサーと給電装置の間のマイクロ波伝搬状態に基づいて最適に給電ビームを制御することにより、複数のIoTセンサーに対して同時かつ高効率に給電することに成功したという。
開発技術の特徴は2つ。1つは、給電装置からIoTセンサーへの電波伝搬路状態を高精度に推定できることだ。伝搬路における電波の振幅や位相変化状態を推定し、電波の多重反射が発生する条件でも高効率に給電を行える。従来技術における位相変化の推定に加えて、新たに振幅変化も推定することで、複数センサーへの最適な給電が可能になった。
もう1つは、アンテナからの電波放射を考慮した最適ビーム制御による同時給電である。マイクロ波の主な用途である通信の電波ビーム制御では、主方向以外への放射は電波干渉の原因になる。この主方向以外のへの放射を、多方向への給電電波として扱うことで高効率な給電を実現した。具体的には、1つのIoTセンサーに給電するためのビームを生成する際、他のIoTセンサーの方向に放射される電波放射の大きさも考慮して制御を行う。これにより、給電装置の送電可能な電力や、受電するIoTセンサーが必要とする電力などの制約条件のもと、複数のIoTセンサーへの給電効率が最大となるビーム制御が可能になる。
技術開発だけでなく、64素子のアンテナアレイからなる給電システムも試作した。同システムでは、給電装置がそれぞれ独立に放射電波の振幅と位相を調整可能なアンテナアレイを持つ。実証実験では、ロボットアームの異なる関節部に装着した2つのIoTセンサーへの給電に適用した。その結果、従来のように1つのIoTセンサーだけへの電波放射を最適化していた場合と比べて、受電電力の弱いIoTセンサーへの給電量を7〜12倍改善できたという。
IoTの普及に伴い、工場内への産業機器用IoTセンサーの導入は今後加速度的に広がるとみられている。しかし、これらのセンサーを全て有線接続にすると、導入コストが増大するだけでなく、生産ラインのレイアウト変更も必要になってしまう。このため、IoTセンサーの無線化の取り組みが進んでいるものの、有線接続が前提の電源供給がネックになっていた。電池を電源にする場合も、動作持続時間や充電/交換のメンテナンスコスト、センサー筐体の容積拡大など多くの課題を抱えている。
そこで、新たな給電方法として、マイクロ波を用いた遠隔給電/充電が期待を集めている。ただし、従来のマイクロ波給電技術では、IoTセンサーのように多数のセンサーが空間に設置されている場合、複数のセンサーに対して同時に高効率な給電を行うことが困難なことが課題になっていた。
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