日本の高品質な鉄道がなぜ海外でそれほど受け入れられていないのか:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
日本IBMは製造業向けイベント「IBM Industrial Forum 京都 2018」を開催。同社の製造業向けの取り組みを紹介するとともに、製造業が先進技術を活用してイノベーションを実現した事例などを紹介した。本稿ではナブテスコの製品安全向上セッションの様子をお伝えする。
海外規格に対応するための5つの柱
海外マーケットに展開する上で難しさとしてあるのが、要求仕様確定に時間を要するため手戻りが発生することや、既存プロジェクトとの差分開発のためシステム設計根拠が不明確である点などだ。その他、組織的に縦割りで部署間の意思疎通やコミュニケーションが不十分である点などにも苦労があるという。
これらに対して、規格に対応するために重要な柱があるという。それは「認証取得」「プロセス」「コスト軽減」「製品品質」「要員スキル」の5つである。
「認証取得」で取得する認証には「IEC62278RAMS」「EN50126RAMS」「IEC62279」「IEC62425」「EN50129」などその対象が多数あり、それらに対応する必要がある。「プロセス」はボトムアップではなくトップダウンの開発プロセスとなっている。コスト軽減は開発の部分で計画遅延とリスクの早期対応がポイントだという。製品品質は鉄道の要求(RAMS、機能安全、形態管理、プロジェクトマネジメント、事業計画)には必須となっており、要員スキルについては、キーパーソンに作業集中し、プロジェクトの掛け持ちなどに注意する必要がある。
IoTでメンテナンスを効率化
今後の戦略については、欧州の競合企業が占有する市場を開拓するため、市場調査に基づく標準製品と派生開発を進めるなど製品競争力を強化する。また、鉄道カンパニー内にとどまらず、カンパニー以外および社外との連携によるエキスパートチームの体制構築を目指す。さらに、規格準拠、コスト、工数およびヒューマンエラー削減を図るため管理、エンジニアリング、テスト、メンテナンス、情報分析および営業支援などにITの積極的導入を行う方針だ。顧客への迅速な提案などセールス手法についても強化する。
このうちITの活用について具体的にみると、「管理」の領域では、対象が要件、プロセス、構成変更、課題・問題になる。実現内容としてはトレーサビリティー、作業進捗の可視化を挙げており、そのメリットとしては手戻りおよび作業遅延減少にコスト軽減がある。「エンジニアリング」の領域ではモデル・システム、ソフトウェアが対象となり、設計の可視化、シミュレーションの実現を目指している。これにより、手戻りの減少によるコスト軽減が図られる。「テスト」の領域ではシステム、ソフトウェアが対象となり、テストの前倒しおよびテストの自動化を実現することで、品質向上およびテストの再現性などのメリットが生まれる。
さらに、「メンテナンス」の領域ではシステム、ハードウェアおよびメカ(機械)関係が対象となり、IoTをベースとした故障予測に必要な情報収集や、収集情報の分析結果をもとにした故障予測(AI)を実現することで、運用を含むシステム全体の信頼性向上とコスト低減に結び付ける。この他、セールス領域では提案活動を対象にして、客先要件の簡易影響分析による迅速な提案活動を実現させる。それにより、提案力の強化と市場投入期間の短縮というメリットがある。
ナブテスコではこうした取り組みで、グローバルに成長し続けるベストソリューションパートナーとなることを2020年度の目指す姿として掲げている。
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