日本の高品質な鉄道がなぜ海外でそれほど受け入れられていないのか:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
日本IBMは製造業向けイベント「IBM Industrial Forum 京都 2018」を開催。同社の製造業向けの取り組みを紹介するとともに、製造業が先進技術を活用してイノベーションを実現した事例などを紹介した。本稿ではナブテスコの製品安全向上セッションの様子をお伝えする。
日本IBMは2018年2月15〜16日、京都市内で製造業向けイベント「IBM Industrial Forum 京都 2018」(京都フォーラム)を開催。「デジタル時代の製造業のモノづくり革新」をテーマに、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボットを使った企業変革の事例を紹介した。
本稿では、製品安全向上セッションで登壇したナブテスコ 鉄道カンパニー 技術統括部 主席技師の竹市正彦氏の講演「ナブテスコ鉄道カンパニーの海外マーケットへの新たなアプローチ」の内容をお伝えする。
日本の鉄道企業に立ちはだかる安全規格
ナブテスコは1925年に創業(前身の日本エアブレーキ)。さまざまな工業製品を開発してきた。2016年12月期の売上高は2446億円で、精密機器(売上高構成比23.2%)、輸送用機器(24.9%)、航空・油圧機器(19.5%)、産業用機器(32.2%)の各事業を展開している。
主要製品としては精密減速機があり、産業用ロボットの関節用途で世界シェア60%を握るとともに、工作機械のATC(オートツールチェンジャー)駆動分野で国内シェア60%を占める。さらに、輸送用機器セグメントでも鉄道車両用ブレーキシステムは国内シェア50%、ドア開閉機で国内シェア70%の占有率を誇るなど、豊富な実績を誇る。
このように国内で実績を残す製品を持つ鉄道カンパニーだが、海外での鉄道インフラ需要の高まりに伴い、システムでの鉄道車両のブレーキやドアの設計・製造・販売に取り組んでいる。
日本の鉄道は、新幹線に代表されるように、高速でしかも緻密なタイムスケジュールで運転されるなど、高い品質を持つ。しかし「簡単に日本の鉄道を海外に持ち込めば良いというわけではない」と竹市氏は強調する。そこには安全規格などの大きな壁があるからだ。
鉄道の世界にはRAMS規格という規格がある。「RAMS」は「Reliability(信頼性)」「Availability(可用性)」「Maintainability(保守性)「Safety(安全性)」の頭文字を合わせた造語で、1999年に欧州規格として発行された。
現在では、欧州の他、アジアでも採用されており、鉄道製品メーカーが準拠すべき規格の1つとなっている。「これをクリアしないと欧州では製品を買ってもらえない」(竹市氏)という重要な規格だ。ただ、国内の鉄道業界では十分に対応および実施ができていないという現状がある。「RAMS規格においてRAMのところはそれほど難しくないが、S(Safety)の領域のハードルがものすごく高い」と竹市氏は述べる。鉄道メーカーでは、国内だけの基準ではなく最初からこれらの規格をクリアすることを想定した開発を進めなければ難しいということである。
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